フィリピンと日本の文化の違いってなに?日本在住フィリピン人とフィリピン生活のリアルを聞いてみた

グローバル化が進む現代社会において、異文化理解はますます重要になっています。日本人が考える「当たり前」がフィリピンでは全く違って見えるように、フィリピン人にとっての「常識」が日本では通用しないことも少なくありません。

本記事では、日本在住のフィリピン人女性・Monica Mia Echizenyaさん(20代、滞在4年)へのインタビューと、フィリピンでの生活経験を通して、両国の文化や生活習慣の違いを掘り下げていきます。留学、移住、あるいは短期旅行を考えている方々に、リアルな異文化体験をお届けします。

移住の背景 ~なぜ海を越えたのか~

―― まず、どうして日本に来ようと思ったの?

Monica Mia Echizenyaさん(日本在住4年目): フィリピンから日本に来て4年になります。20代のうちに来日したのですが、日本での生活を通じて、私自身の価値観や習慣に大きな変化が生まれました。フィリピンにいた頃は、日本はアニメ文化とナイトライフだけが良い国だと思っていましたが、実際に来てみて、日本には美しい歴史と伝統的な場所が全国にあることを知ったんです。

―― フィリピンに住んでみて、どんなところが魅力的だった?

フィリピン生活の魅力: フィリピンでは「家族の絆と温かいコミュニティ」が最大の魅力です。フィリピンの「家族」の概念は日本よりもかなり広く、両親や兄弟姉妹だけでなく、おじ、おば、いとこ、さらにはいとこの子供たちまでを「家族」と考えることが一般的です。この拡大家族の絆は非常に強く、困った時はお互いに助け合うコミュニティが存在します。

また、フィリピン人の「バヤニハン精神」(互いに助け合う精神)や「パキキサマ」(人間関係の調和を大切にする考え方)は、困難な状況でも前向きに生きる力の源となっています。物質的な豊かさだけでなく、人とのつながりを大切にする文化があり、常夏の気候と相まって、リラックスした生活環境が魅力的です。

イメージと現実のギャップ

―― 日本に来て、想像と違ってたことってある?

Monicaさん: 最も驚いた価値観は、日本人の素晴らしい接客サービス、非常に組織的であること、そして公共のルールや規則を忠実に守ることです。これらの姿勢には本当に感銘を受けました。

また、日本人の時間に対する考え方にも驚きました。フィリピン人には、計画や行事に時間通りに来ないという悪い習慣があり、そこから『フィリピン時間』という言葉が生まれているんです。でも日本に来て4年間、日本の文化に囲まれて生活することで、確実に私は変わりました。特に職場での時間を守ることなど、日本の価値観や習慣を身につけました。

―― フィリピンの生活で、最初びっくりしたことは?

フィリピン生活のリアル: フィリピンでの買い物は、日本とはかなり異なる体験になります。まず、ショッピングモールの規模と数の多さにはびっくりするでしょう。マニラやセブなどの都市部には巨大なモールがいくつもあり、週末になると多くの人で賑わいます。エアコンが効いた快適な空間であることから、暑い気候を避ける場所としても利用されています。

一方で、地元の人々が日常的に利用する「サリサリストア」と呼ばれる小さな個人商店も町のあちこちにあります。シャンプーやコンディショナーなどが小袋で売られているのは、収入の少ない層でも必要な分だけ買えるようにという配慮からです。

また、多くのショッピングモールでは入口で警備員によるバッグチェックがあり、大きな店舗ではメタルディテクターを通ることもあります。これはセキュリティ対策の一環ですが、最初は違和感を覚えるかもしれません。

文化的価値観の違い

―― 日本人の考え方で、え?って思ったことある?

Monicaさん: 日本人の組織性や清潔さに対する意識の高さには本当に驚きました。また、特に身の回りを整理整頓し、清潔に保つことの大切さも学びました。これらは私にとって大きな変化をもたらしてくれました。

日本では個人の責任や自己管理が重視される一方で、フィリピンでは家族やコミュニティ全体で支え合うという考え方が強いです。どちらにも良い面がありますが、文化の違いを実感する部分でもあります。

―― フィリピンの家族関係で、日本と違うなーって思うことは?

フィリピンの家族文化: フィリピンでは三世代同居も珍しくなく、おじいちゃん、おばあちゃんが孫の面倒を見ることで、若い親たちが働きに出られる環境が整っています。高齢者は家族の知恵袋として敬われ、重要な意思決定の際にはその意見が尊重されます。

また、洗礼や結婚式で結ばれる「コンパドレ」(代父母)関係も、血縁関係に準ずる重要な絆とされています。重要な決断をする際には家族会議を開いて皆の意見を聞くことも珍しくありません。例えば、海外就労や転職、結婚相手の選択など、日本では個人で決めることも、フィリピンでは家族の承認を得ることが多いです。

食文化の違い

―― フィリピンの食事で、え!って思ったことある?

フィリピンの食文化: フィリピン料理については、意外と知られていない部分も多いですね。まず驚くのは、甘さと酸っぱさ、そして塩気が同時に楽しめる独特の味付けです。例えば「アドボ」という代表的な料理は、肉や魚を酢、醤油、砂糖などで煮込んだ料理ですが、この一品で様々な味が楽しめます。

「バロット」という食べ物も多くの日本人を驚かせます。これは発育途中のアヒルの卵を茹でたもので、現地では栄養価が高いとされる人気のおやつです。見た目は少しインパクトがありますが、勇気を出して食べてみると意外と美味しいと感じる人も多いようです。

また食事のスタイルも日本とは異なります。フィリピンでは「カマヤン」と呼ばれる素手で食べる文化があり、特にレチョン(豚の丸焼き)などの料理は手で食べるのが一般的です。

フィリピンの「お袋の味」は?

フィリピンの「お袋の味」として最も代表的なのは「シニガン」でしょう。タマリンドの酸味が特徴のスープで、魚や豚肉、様々な野菜が入った料理です。家庭によって味付けや具材に違いがあり、まさに「母の味」として親しまれています。

また、「アドボ」も外せません。肉や魚を酢、醤油、にんにくなどで煮込んだ料理で、保存がきく実用的な料理として発展してきました。シンプルながらも奥深い味わいがあり、各家庭独自のレシピがあります。

休日の過ごし方

―― フィリピン人って休日どんな感じで過ごすの?

フィリピンの休日文化: フィリピン人の休日の過ごし方で最も一般的なのは、家族や親戚と過ごす時間を大切にすることです。休日になると大家族で集まってバーベキューをしたり、公園でピクニックを楽しんだりします。特に日曜日は家族の日とされ、多くの人が教会に行った後、家族での活動に時間を使います。

ショッピングモールに行くのも人気のレジャーで、フィリピンのモールは単なる買い物の場所ではなく、食事をしたり、映画を見たり、子供を遊ばせたりできる総合的なエンターテイメント施設となっています。特に暑い時期は、エアコンの効いた快適な空間でゆっくり過ごすことができます。

また、バスケットボールをプレイしたり観戦したりするのも人気の過ごし方です。街中の至る所にバスケットボールコートがあり、休日になると地域の若者たちがゲームを楽しむ姿をよく見かけます。

フィリピンでは、クリスマスや新年はどう過ごす?

フィリピンのクリスマスは世界一長いと言われるほど大切な行事です。なんと9月からデコレーションが始まり、クリスマスソングが流れ始めます。12月になると「シンバン・ガビ」と呼ばれる9日間の早朝ミサが行われ、多くの人が参加します。

クリスマスイブには「ノチェブエナ」と呼ばれる特別な夕食を家族で楽しみます。定番メニューはハモン(ハム)、ケソ・デ・ボラ(チーズ)、そして様々なフィリピン料理です。午前0時になると家族で贈り物を交換し、子供たちはゴッドペアレント(洗礼の際の代父母)を訪ねて「アギナルド」というクリスマスプレゼントをもらいます。

個人的な変化と成長

―― 日本に来てから、ご自身の中で何か変化を感じることはありますか?

Monicaさん: 日本に来て4年間、日本の文化に囲まれて生活することで、確実に私は変わりました。特に職場での時間を守ることなど、日本の価値観や習慣を身につけました。また、特に身の回りを整理整頓し、清潔に保つことの大切さも学びました。

「フィリピン時間」という概念から脱却し、日本人の時間に対する厳格さを身につけることで、仕事や日常生活がより効率的になりました。これは私にとって大きな成長だったと思います。

お気に入りの場所

―― 日本でまた行きたい場所とか、あんまり行きたくない場所ってある?

Monicaさん: 2020年に京都を訪れて、美しい寺院や有名な観光地を巡るなど、伝統的な日本のライフスタイルを体験しました。

また、日本で最も美しいビーチがある沖縄にも行きました。フィリピンのような熱帯の国出身の私は、いつも暑さと青くしょっぱい海の感触が恋しくなるので、できる限り毎年沖縄を訪れるようにしています。

温泉と有名な黒たまごで人気の箱根にも行きました。

日本は美しい国なので、もう行きたくないと思う場所を見つけるのは難しいですね。でも一つだけ思い浮かぶのは、新宿の歌舞伎町です。ここは地元の人たちが危険だと警告してくれる悪名高い場所だからです。

―― フィリピン人に人気の観光地って、外国人が知らないところもあるの?

フィリピンのローカル観光地: フィリピン人に人気の国内観光地で、外国人観光客があまり訪れないスポットとしてまず挙げられるのは「バタネス」です。台湾との間に位置する最北端の島々で、独特の石造りの家屋や美しい自然景観が魅力です。強風に耐えるため厚い石壁で建てられた家々は「イヴァタン様式」と呼ばれ、フィリピン国内でも特異な建築文化を形成しています。

また、「バタド・ライステラス」(バナウェの棚田)も地元民に人気の観光地です。ユネスコ世界遺産にも登録されている2000年以上前に作られた棚田で、特に緑豊かな雨季に美しい景観を楽しめます。

「マスバテ島」は「ロデオの首都」として知られ、毎年4月に開催される「ロデオ・マスバテーニョ」は多くのフィリピン人が訪れる祭りです。牛追いや牛乗りなど、アメリカのロデオを彷彿とさせるイベントが行われ、地元の人々の間では重要な文化行事となっています。

フィリピンの独特な文化と習慣

フィリピンで人気のスポーツや娯楽って何?

フィリピンで圧倒的に人気があるスポーツはバスケットボールです。街のあちこちにバスケットコートがあり、子供から大人まで幅広い年齢層がプレイを楽しんでいます。NBAの試合は大変人気があり、フィリピン人選手がNBAで活躍するのを国を挙げて応援しています。

ボクシングも非常に人気があるスポーツで、特にマニー・パッキャオの試合がある日は国中がテレビの前に釘付けになります。パッキャオの試合中は犯罪率が下がるとさえ言われているほどです。

娯楽としては、カラオケが大変人気です。フィリピン人の歌好きは有名で、家庭にカラオケマシンを持っていることも珍しくありません。友人や家族が集まる時には、必ずと言っていいほどカラオケが登場します。

また、ソーシャルメディアの利用率も非常に高く、特にFacebookは重要なコミュニケーションツールとなっています。フィリピンは「世界のソーシャルメディア利用時間が最も長い国」としても知られています。

まとめ ~異文化理解がもたらすもの~

海を越えて新しい生活を始めるということは、言葉の壁だけでなく、価値観や生活習慣の違いにも直面することを意味します。Monicaさんにとっての日本は、時間の概念や組織性、清潔さといった新しい価値観を学ぶ場でした。一方、フィリピンの文化は家族の絆と温かいコミュニティを重視する「バヤニハン精神」が特徴です。

異文化での暮らしは時に戸惑いをもたらすこともありますが、新たな発見と自己成長の機会でもあります。「フィリピン時間」から日本の時間厳守文化への適応、そして両国の良さを理解することで、より豊かな人生観を得ることができるのです。

文化の違いを理解し、尊重することは、グローバル化が進む現代社会において、ますます重要になっています。本記事が、これから留学や移住を考えている方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

フィリピンは「世界で最も親しみやすい国」とも言われるほど、人々の温かさと優しさが溢れる国です。家族の絆を大切にする文化、食事を通じた交流、宗教行事と日常生活の密接な関わりなど、日本人が学べる点も多くあります。フィリピンに旅行や長期滞在を考えている方は、ぜひこうした文化の違いを楽しみながら、現地の人々と交流してみてください。

この記事を書いた世界人

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