【日本在住サウジアラビア人に聞いた!】知っておきたいサウジアラビアの文化 ~留学、長期滞在、移住、短期滞在・旅行の参考に~

サウジアラビアってどんな国? 日本からのイメージ
サウジアラビアというと、多くの日本人は「石油大国」「砂漠の国」「イスラム教の聖地メッカがある国」というイメージを思い浮かべるかもしれません。また、女性の黒いアバヤ(全身を覆う衣装)や厳格な宗教的な規律のイメージも強いでしょう。
しかし、実際のサウジアラビアは今、大きな変革の時を迎えています。「ビジョン2030」と呼ばれる国家計画のもと、石油依存からの脱却を目指し、観光、エンターテイメント、テクノロジーなど様々な分野で急速な発展を遂げています。女性の権利拡大や外国人観光客の受け入れ開始など、従来のイメージとは異なる新しいサウジアラビアの姿が見え始めています。
サウジアラビアで暮らす/サウジアラビアに行くメリットについて
サウジアラビアに滞在するメリットは多岐にわたります。まず、経済的な面では税金がほとんどなく、特に所得税がないため、給与の手取り額が多いことが挙げられます。また、中東の中心に位置するため、周辺国への旅行も容易です。
文化的には、何千年もの歴史に裏打ちされた豊かな伝統文化と、急速に進む現代化が融合した独特の雰囲気を体験できます。特に近年は、世界的なスポーツイベントやコンサート、映画祭などの文化イベントが増えており、エンターテイメントの選択肢も広がっています。
何より、地元の人々の温かいもてなしの心に触れることができるのは大きな魅力です。「カラム・ワ・アッシャイ(言葉とお茶)」という言葉があるように、会話とおもてなしを大切にする文化は訪問者に深い印象を残すでしょう。
それでは、日本在住のサウジアラビア人に聞いた文化的な側面について見ていきましょう。
① 知っておきたいサウジアラビアの文化(歴史)
日本人が知らずにびっくりするサウジアラビアの歴史ってある?
サウジアラビアの歴史で日本人に驚かれるのは、現代のサウジアラビア王国が比較的新しい国家だということですね。現在の形での国家統一は1932年で、実は日本の明治時代よりも後なんです。ただ、この地域自体の歴史は非常に古く、紀元前から重要な交易路として栄えていました。
また、メッカやメディナといったイスラム教の聖地が国内にあることで、1400年以上にわたってイスラム世界の中心的役割を果たしてきたことも重要です。毎年何百万人もの巡礼者を受け入れる「ハッジ(大巡礼)」の運営は国の重要な責務となっています。
驚かれるのは、実はサウジアラビアには古代文明の遺跡も数多くあるということです。特に北部のヘグラにある「マダイン・サーレハ」は、ヨルダンのペトラと同じナバテア人が作った岩窟遺跡で、「砂漠のペトラ」とも呼ばれています。また、紅海沿岸の古代貿易港アル・ウラやディルイーヤの遺跡など、UNESCO世界遺産も増えています。
日本人にびっくりされるサウジアラビアの習慣ってある?
日本人が最も驚く習慣の一つは、時間の感覚の違いでしょうね。「インシャアッラー(神の御心のままに)」という言葉があるように、すべては神の意志によるという考え方があるため、約束の時間に遅れることも珍しくありません。日本の時間厳守の文化とは大きく異なりますね。
また、男性同士が挨拶で頬にキスをしたり、男性同士が手をつないで歩いたりすることも、日本人には新鮮に映るようです。これは親しみや敬意の表現であり、同性愛とは全く関係ありません。
公共の場で礼拝をすることも、日本人には珍しく映るようですね。イスラム教徒は一日に5回の礼拝をしますが、その時間になると、ショッピングモールでも道端でも、その場で礼拝を始めます。店も一時的に閉まることがあり、最初は戸惑う日本人も多いようです。
② 知っておきたいサウジアラビアの文化(コミュニケーション)
サウジアラビア人は会話の中でどんなことを大切にする?
サウジアラビアでは、会話の内容だけでなく、その「方法」も非常に重要視されます。まず、直接的な表現よりも遠回しな言い方が好まれます。特に否定的なことを伝える時は、婉曲的な表現を使います。「ノー」と直接言わず、「インシャアッラー(神のご意志があれば)」と言って曖昧にすることも多いですね。
また、会話の前の挨拶と近況報告は省略しません。ビジネスの話でも、いきなり本題に入らず、家族の健康や最近の出来事について尋ねてから始めるのがマナーです。日本人の「空気を読む」文化に似ている部分もありますが、もっと言語化して表現する文化です。
対人距離も日本とは異なります。特に同性同士は、日本人が考える以上に近い距離で会話します。また、会話中のアイコンタクトは誠実さの表れとされ、とても重要です。
もう一つ特徴的なのは、断りの文化です。サウジでは直接的に断ることは相手の面子を潰すことになるため避けられます。「検討します」や「できるといいですね」といった表現が実質的な断りであることも多いので、文脈を読み取る必要があります。
日本人とサウジアラビア人のコミュニケーションの違いは?
日本人とサウジアラビア人のコミュニケーションスタイルの大きな違いは、表現の直接性でしょうね。日本人は言葉少なく、控えめな表現を好む傾向がありますが、サウジ人はより情熱的で表現豊かです。会話中の声のトーンも大きく、身振り手振りも多用します。
また、日本では「沈黙」が会話の自然な一部とされることがありますが、サウジアラビアでは沈黙は不快感や会話の不成立を意味することがあります。そのため、常に会話を途切れさせないよう心がける文化があります。
さらに、日本では目上の人に敬意を表すために視線を下げることがありますが、サウジでは相手の目をしっかり見て話すことが誠実さの表れとされています。ただし、異性間では長時間の直接的な視線は避けられることが多いです。
話題選びも違いがあります。日本では宗教や政治について公の場であまり議論しませんが、サウジでは(特に宗教については)日常的な会話の一部となっています。一方で、家族や特に女性家族についての詳しい質問は避けるべき話題とされています。
③ 知っておきたいサウジアラビアの文化(プレゼント)
サウジアラビアでは、友人・家族にどんなプレゼントをあげる?
サウジアラビアでのプレゼント文化は、日本とは少し異なります。まず、家族や親しい友人への贈り物としては、高級な香水やお香(特にウードと呼ばれる沈香)が非常に人気です。香りの文化が発達しているため、良い香りのギフトは高く評価されます。
また、デーツ(ナツメヤシの実)の高級なものや、蜂蜜などの自然食品もよく贈られます。特に異なる地域や国からの珍しい種類のものは喜ばれます。
若い世代への贈り物としては、最新のガジェットや有名ブランドのアイテムも人気です。特に子供たちへは、教育的な玩具や本も良いですね。
ただし、贈り物をする際の注意点として、左手で渡すことは避け、できるだけ両手か右手で渡すようにします。また、公の場では特に異性間でのプレゼント交換は控えめにすることが望ましいです。
イスラムの教えに沿って、アルコール製品や豚由来の製品、また宗教的に問題のある画像を含むものは避けるべきです。日本から持っていくなら、折り紙や日本の伝統工芸品、高級な日本茶なども喜ばれますよ。
サウジアラビアで記念日に食べる特別な食事ってある?
サウジアラビアでの記念日の食事といえば、特にイード・アル・フィトル(断食明けのお祭り)とイード・アル・アドハ(犠牲祭)の二大祭には特別な料理が用意されます。
イード・アル・フィトルでは、断食月ラマダンの後ということもあり、甘いデザートが多く登場します。「クライファ」という細かく砕いたパイ生地に砂糖シロップをかけたデザートや、「マームール」というデーツ入りのクッキーなどが定番です。
イード・アル・アドハでは、羊の丸焼き「マンディ」や「マズルーフ」が祝宴の中心となります。大きな皿に豪華に盛り付けられ、家族や友人と囲んで食べます。
また、赤ちゃんが生まれた時には「アキーカ」という儀式があり、羊を屠って肉を家族や近所の人々、そして貧しい人々に分け与える習慣があります。このときには特別なお祝いの食事会が開かれます。
結婚式では「ズルビヤン」という香り豊かなスパイスで味付けした特別なお米料理が出されることが多いです。地域によって料理の種類は異なりますが、どれも豪華で来客をもてなすという気持ちが表れています。
④ 知っておきたいサウジアラビアの文化(食文化)
サウジアラビアで、お袋の味と言えば?
サウジアラビアの「お袋の味」として真っ先に思い浮かぶのは「カブサ」ですね。バスマティ米にスパイスを効かせ、鶏肉や羊肉を乗せたこの料理は、まさにサウジの国民食です。各家庭によって秘伝のスパイスブレンドがあり、母から娘へと受け継がれていきます。
また、「マルグーグ」という小麦粉の平たいパンを野菜と肉のスープで煮込んだ料理も、寒い日には母親が作ってくれる温かい思い出の味です。手間暇かかる料理なので、特別な愛情を感じる一品です。
「サリーク」も家庭料理の定番で、鶏肉のブロスで炊いたクリーミーなお米料理です。病気の時や体力が必要な時に「元気になるから食べなさい」と母親が作ってくれる料理として、多くのサウジ人の心に残っています。
「ジャリーシュ」も忘れてはならない家庭料理で、砕いた小麦と肉を煮込んだポリッジのような食べ物です。特にラマダン月には、一日の断食を終えた後に母親の手作りジャリーシュで体を温めるという思い出を持つ人が多いですね。
日本人にびっくりされるサウジアラビアの食事ってある?
日本人が驚くサウジの食習慣はいくつかありますね。まず、右手で食べる文化です。特にカブサなどの伝統的な料理は手で食べるのが一般的で、最初は戸惑う日本人も多いですが、実は手で食べることで料理の温度や食感をより楽しめるんですよ。
また、食事の量の多さにも驚かれることが多いです。もてなしの文化として、ゲストにはたくさんの種類の料理が出され、おかわりを何度も勧められます。断るのは失礼にあたることもあるので、少量ずつ食べるのがコツです。
飲み物の文化も異なります。食事中に冷たい飲み物ではなく、温かいお茶を一緒に飲むことも多いです。また、食後には必ずアラビックコーヒーとデーツが出されます。このコーヒーは日本のコーヒーよりも薄く、カルダモンなどのスパイスが入っているのが特徴です。
時間帯も違いますね。夕食は日本より遅く、早くても午後8時以降、特に夏や休日は午後10時頃から食べ始めることも珍しくありません。また、招待された場合は時間通りに行くのではなく、30分ほど遅れて行くのがマナーとされていることにも驚かれるかもしれません。
⑤ 知っておきたいサウジアラビアの文化(その他)
サウジアラビアで人気のスポーツやエンターテイメントって何?
サウジアラビアで断トツに人気があるのはサッカーですね。サウジプロリーグは国内で熱狂的に支持されていて、特にアル・ヒラル、アル・ナスル、アル・イッティハドといったクラブは強いファンベースを持っています。最近ではクリスティアーノ・ロナウドなどの世界的スターの加入もあり、さらに注目が高まっています。
伝統的なスポーツとしては、ラクダレースやファルコン(鷹)を使った狩猟競技も人気があります。これらは砂漠の生活から生まれた伝統スポーツで、今でも大切に継承されています。
エンターテイメントとしては、以前は制限が厳しかった映画館も2018年から解禁され、急速に人気を博しています。また、最近では国際的な音楽フェスや文化イベントも増えていて、特に若者の間で大きな盛り上がりを見せています。
家庭内では、特に女性や子供たちの間でソーシャルメディアの利用率が非常に高いです。YouTubeやTikTokなどで地元のインフルエンサーが人気を集めており、新しい形のエンターテイメントとして定着しています。
サウジアラビア人に人気の観光地はどこ?
サウジアラビア人に人気の国内観光地としては、まず西部の山岳リゾート地「タイフ」が挙げられます。標高が高く涼しい気候のため、特に暑い夏の間は避暑地として人気があります。バラ畑やフルーツ農園が有名で、「アラビアの庭園」とも呼ばれています。
また、北西部の「アル・ウラ」も最近特に注目されている場所です。古代遺跡や壮大な砂岩の風景があり、「冬のタンドラ」と呼ばれる音楽や文化のフェスティバルも開催されています。
東部の「アルアフサ」オアシスも地元民に人気のスポットで、天然の湧き水から生まれた緑豊かなエリアです。伝統的な農業方法が今も続けられており、ユネスコの世界遺産にも登録されています。
沿岸部では「キングダム・タワー」や「アブドゥル・アジズ国際文化センター」などの現代的な建築物が立ち並ぶジェッダのウォーターフロントも人気です。特に夕方から夜にかけて、家族連れで賑わいます。
これらの場所は、外国人観光客にはまだあまり知られていない「地元の人々のお気に入り」スポットです。最近では国内観光も盛んになっており、特に週末には国内旅行を楽しむサウジ人家族を多く見かけます。
まとめ
サウジアラビアの文化は、イスラム教の教えと砂漠の遊牧民の伝統が基盤となっていますが、近年の急速な近代化と改革によって大きく変化しつつあります。家族を中心とした強い絆、もてなしの精神、そして食事や会話を通じたコミュニケーションの重視など、日本とは異なる価値観や習慣が多くあります。
特に、時間の感覚、対人関係の作り方、食事のマナーなどは、日本人にとって新鮮に映る部分も多いでしょう。しかし、敬老精神や礼儀を重んじる点では共通する部分もあり、互いの文化を尊重すれば、深い交流が生まれる可能性を秘めています。
サウジアラビアを訪れる際は、現地の習慣やマナーに敬意を払い、オープンマインドで接することで、観光ガイドブックだけでは得られない貴重な経験や出会いがあるでしょう。特に地元の人々との交流を通じて、メディアでは伝わりにくい温かさや多様性を感じることができるはずです。
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