ミュージカル映画『ラ・ボエーム』公開。舞台は1830年代パリから現代ニューヨークへ

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不朽の名作オペラ「ラ・ボエーム」を新たにミュージカルとして描く『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』が、10月6日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国で上映されます。舞台を1830年代のパリから現代のニューヨークに移し、メインキャラクターにアジア人歌手を据えるなど、大胆なリメイクがなされた本作。なぜ、現代のニューヨークなのか? 作品の舞台背景に注目しつつご紹介します。

【STORY】

大晦日のニューヨーク。凍える寒さの屋根裏部屋で、その日暮らしの夢見る4人の芸術家たち。その中の一 人、詩人のロドルフォが部屋に残っていると、隣人のミミが彼の火を借りにやって来て、2人はたちまち恋に落ちる。同じころ、店で仲間と新年パーティをしていたマルチェッロは、偶然やってきた元恋人ムゼッタと再会。最初は戸惑いつつも、2人の間にはかつての強い愛が蘇るのだった。運命的な出会いを果たした、ミミは重い病に侵され、ロドルフォはそんな彼女のもとを立ち去っていた。同じころ、ムゼッタとマルチェッロも嫉妬心から別れを迎えていた。すれ違う2組 の恋人たち。そしてそれぞれ別の道を選んでいくのだが――。 

© 2022 More Than Musical.All Rights Reserved.

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オペラ『ラ・ボエーム』とは?

ジャコモ・プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」は、パリに住む若き芸術家たちの青春と恋を描く物語。1896年にイタリア・トリノで初演されて以来、世界中のオペラファンに愛されてきました。ブロードウェイミュージカル『RENT(レント)』の原作となったことでも知られています。

ストーリーは、今風に言えば、パリの屋根裏部屋でルームシェアしているアーティストたちの青春群像劇といったところ。

夢を追う貧しい若者の暮らしは今も昔も変わりません。貧乏すぎて薪を買えないので、仕方なく原稿を燃やして暖を取ってみたり、臨時収入が入ったと思ったら、家賃の取り立てを誤魔化してぱーっと飲み食いに使ってしまったり……。

この物語が時代を超えて愛される理由は、彼らの生活に自分の青春時代を重ねて見てしまうからかもしれません。

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プッチーニは、『ラ・ボエーム』以外にも、『トスカ』『蝶々夫人』『トゥーランドット』などの傑作で知られています。オペラにあまり馴染みがない方も、「私のお父さん」「誰も寝てはならぬ」などのメロディを耳にしたことがあるのではないでしょうか。プッチーニのメロディーメイカーぶりはもちろん『ラ・ボエーム』でも発揮されており、「私の名はミミ」「私が街をあるけば」など、聴きどころが満載です。

上演時間が1時間45分ほどとコンパクトなので、オペラを初めて観る方にもおすすめの演目です。

舞台をパンデミックのニューヨークに

『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』では、舞台を1830年代のパリからパンデミックのニューヨークに移し、主要登場人物にアジア人キャストを起用。このアレンジによって、格差、貧困、人種的マイノリティなどの生きづらさが浮き彫りになっています。

同じ楽曲、台本を用いながらここまで違った印象を受けるのは、画面全体にパンデミック当時の抑圧された空気感が滲み出ているためかもしれません。

ふと思い出してしまうのは、Covid-19が流行し始め、先行きが見えない不安と感染の恐怖に社会が覆われていた頃。「不要不急」という言葉のもと、音楽や演劇の公演が次々と中止された時期がありました。

ニューヨークも例外ではなく、劇場が相次いで閉鎖されました。本作はそんなバックグラウンドから生まれています。

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クリエイティブ・ディレクターのジュリア・ノーリン=メラートは、「アメリカではパンデミックにより、オペラ『ラ・ボエーム』の16以上の公演がキャンセルされました。それによって多くの出演者たちにも大きな影響を及ぼしたのです。本作は、この困難な時代を経験した若い芸術家たちの心を揺さぶる物語をリアルタイムで捉えています」とコメントしています。 

製作にあたったのは、オペラを現代に通じる新しい形式で上演することをコンセプトとしているアジア初のオペラカンパニー「モアザンミュージカル」。主要キャストとして、詩人のロドルフォに中国人テノール歌手シャン・ズウェン、ミミに中国人ソプラノ歌手ビジョー・チャン、哲学者コッリーネに日本人バス歌手の井上秀則を起用しています。

舞台背景から見えてくるニューヨーク

本作をより深く味わうために、1996年に初演されたブロードウェイミュージカル『RENT』にも少し触れておきたいと思います。

作詞・作曲・脚本を手掛けたジョナサン・ラーソンは、「『ラ・ボエーム』をニューヨークの喧騒に置き換えたら?」という着想から『RENT』を書き上げたと言います。

 

ストーリーの大筋は『ラ・ボエーム』をなぞっていますが、舞台はパリから1989年~1990年のニューヨーク・イーストヴィレッジに。主要登場人物には大きなアレンジが加えられ、エスニックマイノリティ、セクシャルマイノリティ、HIV陽性者など、社会的弱者にスポットを当てています。

 

1980年~1990年代は、エイズが猛威を振るった時期。『RENT』はまさにその社会的背景を舞台に描かれているのです。

HIV陽性者たちの自助グループが、集会で「尊厳を失ってしまうのだろうか?」と苦しみを吐露する象徴的なシーンがあります。HIV陽性者たちの輪唱に徐々にホームレスが加わっていき、ラストは声なき者たちの合唱となります。「尊厳を失ってしまうのだろうか」という言葉は社会で虐げられている人々すべての恐れであり、多層的な意味を持っています。

 

『ラ・ボエーム』を下敷きに『RENT』が制作され、今年新たに『ラ・ボエーム』がパンデミックのニューヨークを舞台に刷新されたーーこの文脈を追っていくと、本作をまた新たな角度から見ることができるかもしれません。

映画情報

ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌

公開日: 106日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

配給:フラニー&Co. シネメディア リュミエール

監督:レイン・レトマー 作曲:ジャコモ・プッチーニ/音楽監督:ショーン・ケリー 製作:モアザンミュージカル(長谷川留美子)

出演:ビジョー・チャン、シャン・ズウェン、ラリサ・マルティネス、ルイス・アレハンドロ・オロスコ、井上秀則、アンソニー・ロス・コスタンツォ、イ・ヤン

2022年/香港・アメリカ/スコープサイズ/96分/カラー/伊語/5.1ch/原題『La bohème: A New York Love Song』/日本語字幕翻訳:古田由紀子/配給:フラニー&Co. シネメディア リュミエール/映倫区分G/公式サイ:la-boheme.jp

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【まとめ】英語を活用して世界を広げませんか?

この秋公開されるミュージカル映画『ラ・ボエーム』。オペラのアダプションのため本編はイタリア語で歌われますが、作品の背景を理解しておくとより深く味わえます。時事問題を英語で理解できるようになると世界が広がるかもしれませんよ。

 

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この記事を書いた世界人

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