現地人が教えるタイで人気の秘境寺院5選

タイといえば、バンコクの三大寺院(ワット・プラケオ、ワット・ポー、ワット・アルン)が有名ですが、実は観光客にはまだあまり知られていない美しい秘境寺院が数多く存在します。今回は、バンコク在住12年のソムチャイさん(仮名)に、地元の人だからこそ知る神秘的で美しい寺院を5つ教えてもらいました。これらの寺院は、タイの伝統と現代アートが融合した独特の美しさを持ち、静寂の中で心を癒してくれる特別な場所ばかりです。
タイの寺院文化の深い意味
――ソムチャイさん、タイ人にとって寺院はどのような存在なんですか?
タイ人にとって寺院は、単なる観光地ではなく日々の生活に根ざした心の支えなんです。私たちは毎朝、食べ物や日用品を寺院に持参して僧侶にお布施をする「タンブン」という徳を積む行為を日常的に行っています。
仏教国であるタイには3万ヶ所以上の寺院があり、どんな小さな集落にもお寺があって、黄衣をまとった僧侶を見かけることができます。特に今回紹介する秘境寺院は、観光地化されていない本当のタイの精神性を感じられる場所なんです。
タイの寺院は、日本の大乗仏教とは異なる上座部仏教の伝統に基づいています。出家した僧侶だけが救われるという教えのもと、多くの男性が一生に一度は出家を経験するんですよ。そんな深い信仰に支えられた寺院だからこそ、訪れる人の心を深く癒してくれるんです。
現地人おすすめ!秘境寺院5選
1. ワット・パークナム・パーシーチャルーン – 宇宙のような神秘の天井画
――まず最初におすすめの秘境寺院を教えてください
まずはワット・パークナムを紹介したいと思います。この寺院は最近日本人観光客の間でも話題になっていますが、まだまだ秘境と言える素晴らしい場所です。
ワット・パークナムの正式名称は「ワット・パークナム・パーシーチャルーン」で、「河口の寺院」という意味なんです。アユタヤ王朝時代の1488年に建立された第3級王室寺院で、500年以上の歴史を持つ由緒ある寺院です。
この寺院の最大の見どころは、高さ80メートルの大仏塔5階にあるエメラルドグリーンに輝く仏舎利塔と、宇宙のような天井画です。まるでアートのような仏陀の生涯図(仏伝図)の天井画は、息をのむほどの美しさで、他のタイの寺院とは一線を画す世界観を持っています。
また、2021年には瞑想の姿勢としては世界で最も高いといわれている高さ69mのブロンズでできた黄金の仏像も完成しました。この寺院は、タンマガーイ式瞑想の発祥地としても有名で、多くのタイ人から深い信仰を集めています。
場所: バンコク・パーシーチャルーン区
アクセス: BTSタラート・プルー駅からタクシーで約10分、またはMRTバンスー駅からバスとタクシー
営業時間: 6:00-18:00
入場料: 無料
2. ワット・タムスア(クラビ)- 雲海を望む天空の寺院
――2番目のスポットはどこですか?
次はクラビにあるワット・タムスアです。この寺院は「タイガーケーブ(虎の洞窟)」とも呼ばれ、1970年代まで野生のトラが目撃されていた神秘的な場所なんです。
ワット・タムスアの魅力は、1,260段の石段を登った標高約600mの頂上から見る絶景です。そこには「ブッダの足跡」と呼ばれる史跡があり、クラビ全体の素晴らしい眺望を楽しむことができます。
特に感動的なのは、朝晩の気温差が大きく、空気が澄んでいる条件が整った時に、早朝の雲海を見ることができることです。まさに天空の寺院と呼ぶにふさわしい絶景で、体力に自信がある方にはぜひ挑戦してほしい場所です。
現在は虎は見られませんが、敷地内の至る所に虎の銅像などが配され、山頂には鎮座する大小黄金色の仏像や仏塔とともに、大自然と街並みの絶景が楽しめます。階段を登りきった人だけが目にすることができる達成感も格別ですよ。
場所: クラビ県
アクセス: クラビタウンからソンテウまたはタクシーで約15分
営業時間: 6:00-18:00
入場料: 無料
3. ワット・プラタート・パーソーンケーオ – ペチャブーンの神秘の白い仏像
――3番目のスポットは?
次は”タイのスイス”と呼ばれるペチャブーン県にあるワット・プラタート・パーソーンケーオです。この寺院は2004年に仏教の修行の地として作られた比較的新しい寺院ですが、その神秘的な美しさは一度は見ておきたい景色です。
この寺院の最大の特徴は、マトリョーシカのように連なる5体の真っ白な菩薩像です。その昔、空を飛んできたガラスの球体が山の頂にある洞窟に消えたのを目撃し、地元民が神聖な出来事と捉え、「ガラスが隠れた仏の場所」と呼んでこの地に仏塔を建立したという神秘的な伝説があります。
仏塔や壁、廊下は宝石や粉砕された陶器の装飾が施され、他の寺院では見られないアートな造りも見どころです。ペッチャブーンの緑豊かな環境に溶け込む幻想的な寺院で、まさしく神秘的な空気に包まれています。
バンコクからペッチャブーンまではバスや車での移動がメインとなり、難易度はやや高めですが、その分秘境感をたっぷり味わえる特別な場所です。
場所: ペチャブーン県カオ・コー地区
アクセス: バンコクからバスで約5時間、その後ソンテウで約1時間
営業時間: 6:00-18:00
入場料: 無料
4. ワット・ベンチャマボピット – 大理石の美しい寺院
――4番目のスポットは?
4番目はバンコクにあるワット・ベンチャマボピットです。別名”大理石寺院”と呼ばれ、建物のほとんどがイタリア製の大理石でできた美しいお寺なんです。
この寺院は、最も国民から尊敬されたラーマ5世によって建てられ、ナリサラ・ヌワティウォン王子によって設計されました。柱やステンドグラスの窓など、随所にヨーロッパの影響が見受けられ、タイの他の寺院とは雰囲気が異なる独特の美しさがあります。
有名でありながら比較的観光客が少なく、ゆっくり見て楽しめるのも魅力です。白い大理石の美しさと西洋技術が融合したタイ建築の傑作として、建築に興味がある方には特におすすめです。
また、この寺院ではラーマ5世が眠る場所でもあり、タイ人にとって非常に神聖な場所として大切にされています。
場所: バンコク・ドゥシット地区
アクセス: BTSアーリー駅からタクシーで約15分
営業時間: 6:00-18:00
入場料: 20バーツ
5. ワット・タムスア(カンチャナブリー)- 黄金仏像と360度の絶景
――最後の5番目のスポットは?
最後はカンチャナブリーにあるワット・タムスアです。同名の寺院がクラビにもありますが、こちらも素晴らしい秘境寺院です。
この寺院は、タイと中国芸術の影響を受けた興味深い建築様式で建てられており、ワチラロンコーン・ダムから4kmほど離れた丘の上にあります。遠くからもその姿を見ることができる美しい立地です。
157段ある階段を登った先には、**1973年に建てられたカンチャナブリーで最も大きい黄金の仏像「プラシンナプラターンポーン」**が参拝者を迎えてくれます。足が不自由な方はケーブルカーの利用も可能です。
最大の見どころは、高さ75mもある9重仏塔の最上階から望む360度のパノラマの風景です。黄金の仏像と周辺の自然の緑の美しいコントラストが本当に見事で、心が洗われるような美しさです。
場所: カンチャナブリー県
アクセス: カンチャナブリーからソンテウまたはタクシーで約30分
営業時間: 6:00-18:00
入場料: 無料
秘境寺院を訪れる際の心得
――これらの秘境寺院を訪れる時に、現地の人として気をつけてほしいことはありますか?
まず、服装のマナーは絶対に守ってください。タイは厳格な仏教信仰の国なので、肌を露出した服装では入場を断られる可能性があります。女性は肩や膝が出る服装は避け、男性も半ズボンやダメージジーンズは避けましょう。サンダルやサングラス、帽子もNGです。
女性は僧侶の体や衣類、持ち物などに直接手を触れてはいけません。もし遭遇しても、写真撮影のお願いなどはしないようにしましょう。宗教に敬意を払うことが最も重要です。
静寂を保つことも大切です。寺院内で大きな声で笑ったり、走り回ったりすることは控えてください。これらの寺院は信者の方が瞑想やお祈りをするための神聖な施設です。
写真を撮る際は、仏塔や仏像には触れず、ジャンプやヨガのポーズでの写真撮影もNGです。美しい景色に感動する気持ちは理解できますが、常に敬意を持って行動してください。
秘境寺院での特別な体験
――これらの寺院でより深い体験をするためのアドバイスをお願いします
早朝の参拝をおすすめします。特に6:00-8:00の時間帯は、地元の人々がお布施に来る時間で、本当のタイの仏教文化を体験できます。また、観光客も少なく、静寂の中で心を落ち着けることができます。
瞑想体験にも挑戦してみてください。特にワット・パークナムはタンマガーイ式瞑想の発祥地なので、瞑想室で実際に瞑想を体験することができます。言葉が分からなくても、心を静めることは国境を越えた体験です。
**タンブン(徳積み)**も体験してみてください。寺院の近くで小さなお花や線香、ろうそくを購入して、仏像にお供えすることで、タイ人と同じように功徳を積むことができます。
最後に、それぞれの寺院の歴史や背景を事前に調べておくと、より深く理解できます。ただ美しい景色を見るだけでなく、なぜその場所が神聖とされているのか、どんな信仰に支えられているのかを知ることで、心に残る特別な体験になりますよ。
季節とアクセスのアドバイス
――最後に、これらの寺院を訪れるベストシーズンと注意点を教えてください
11月から2月の乾季が最もおすすめです。気温も比較的涼しく、雨も少ないので、特に山にある寺院への参拝には最適です。ワット・タムスア(クラビ)で雲海を見たい場合は、この時期の早朝がベストです。
3月から5月の暑期は気温が40℃近くになることもあるので、水分補給と休憩を十分に取ってください。特に階段の多い寺院では熱中症に注意が必要です。
6月から10月の雨季は、道路が冠水することもあるので、地方の寺院への移動は特に注意が必要です。ただし、雨上がりの空気が澄んだ時の景色は格別に美しいです。
バンコク以外の寺院へは、レンタカーやツアーを利用することをおすすめします。公共交通機関でのアクセスが難しい場所もあるので、事前にしっかりと計画を立てることが大切です。
まとめ
今回ご紹介したタイの秘境寺院5選は、観光地化された有名寺院では味わえない、本当のタイの精神性と美しさを体験できる特別な場所ばかりです。
ワット・パークナムでは宇宙のような神秘的な天井画、**ワット・タムスア(クラビ)では雲海を望む天空の絶景、ワット・プラタート・パーソーンケーオでは連なる白い菩薩像の神秘、ワット・ベンチャマボピットでは大理石の美しい建築、そしてワット・タムスア(カンチャナブリー)**では360度のパノラマ絶景を楽しめます。
これらの寺院は、単なる観光スポットを超えて、タイの深い精神文化に触れることができる聖地です。訪れる際は、敬意を持って参拝し、静寂の中で自分自身と向き合う貴重な時間を過ごしてください。
きっと、ガイドブックには載らないタイの真の美しさと、心の平安を発見することができるでしょう。次回のタイ旅行では、ぜひこれらの秘境寺院を訪れて、特別な体験をしてみてくださいね。