現地人が教えるシンガポールで人気のホーカーズ5選

シンガポールといえば、多民族国家ならではの豊かな食文化を誇る美食の島として世界中に知られています。中でも「ホーカーセンター」(屋台街)は、シンガポール政府が無形文化遺産にも登録する、この国のアイデンティティそのものです。中華、マレー、インド、プラナカンなど、様々な民族の料理が一堂に会する空間で、世界中の美食家たちが「アジア最高峰のストリートフード」と絶賛しています。
そこで今回は、シンガポール在住15年のリーさん(仮名、シンガポール人)に、観光ガイドには載っていない、現地人だからこそ知るホーカーセンター文化と本当に美味しいホーカーズを5つ教えてもらいました。ホーカー文化の歴史から正しい注文方法まで、シンガポールのホーカー体験を完全ガイドします。
シンガポールのホーカー文化の基本と背景
――シンガポールのホーカー文化って、シンガポール人からするとどんな意味を持ってるの?簡単に説明してもらえる?
ホーカー文化は、シンガポールの「国民的アイデンティティ」そのものと言っても過言じゃないんだ。1960年代にリー・クアンユー首相(当時)が、衛生面と都市計画の観点から路上の屋台を政府管理のホーカーセンターに集約したのが始まりなんだよ。
この政策は単なる衛生管理じゃなくて、「多民族が一つの屋根の下で食事を共にする」という国家統合の理念も含んでいたんだ。中華系、マレー系、インド系、プラナカンの人々が同じ空間で料理を作り、お客さんとして食べることで、シンガポールの「多民族和諧」(ハーモニー)を体現する場所になったんだよ。
シンガポール人にとってホーカーセンターは、単なる食事の場所じゃなくて「コミュニティの中心」なんだ。朝は「コピ」(コーヒー)を飲みながら新聞を読む叔父さんたち、昼はオフィスワーカーたち、夜は家族連れや友達同士と、一日中いろんな人たちで賑わっているよ。
2020年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されて、世界的にもその価値が認められたんだ。でも僕たちにとっては、子供の頃から慣れ親しんだ「日常」なんだよね。
――ホーカーセンターでの食事スタイルや、他の国の屋台文化との違いは?
シンガポールのホーカーセンターは、他の東南アジアの屋台とは全然違うシステムなんだ。まず、政府が厳格に衛生管理をしていて、すべての店舗にグレード(A、B、C)が付けられているんだよ。だから安心して食べられるし、観光客も心配する必要がないんだ。
食事のスタイルも独特で、「チョップ(chope)」っていう席取り文化があるんだ。ティッシュペーパーやハンカチをテーブルに置いて席を確保してから、各ストールに注文しに行くんだよ。これは他の国では見られない、シンガポール特有のマナーだね。
料理の種類も、一つのホーカーセンターで世界一周できるくらい多様なんだ。中華系では「チキンライス」や「チャークエイティアオ」、マレー系では「ナシレマ」や「ミーゴレン」、インド系では「プラタ」や「ビリヤニ」、プラナカンでは「ラクサ」など、本格的な民族料理が格安で楽しめるんだよ。
価格も驚くほど安くて、一食3〜8シンガポールドル(約300〜800円)で満腹になれるんだ。これは政府の補助金政策のおかげで、「すべての国民が美味しい食事にアクセスできる」という理念が実現されているんだ。
他の国の屋台と違うのは、「専門特化」の文化だね。一つのストールは基本的に一種類の料理しか作らないから、それぞれが職人レベルの技術を持っているんだ。何十年も同じ料理を作り続けている「アンクル」や「アンティ」(おじさん、おばさん)たちの技術は、まさに芸術レベルだよ。
現地人おすすめ!人気のホーカーズ5選
1. 天天海南鶏飯(Tian Tian Hainanese Chicken Rice)- マックスウェル・フードセンター
――まず最初におすすめのホーカーズを教えて
天天海南鶏飯は、シンガポールで最も有名なチキンライス店の一つなんだ。マックスウェル・フードセンターの#01-10で1983年から営業していて、世界中の美食家やセレブが訪れる超有名店だよ。アンソニー・ボーデインも絶賛したし、日本のメディアでもよく紹介されているね。
天天のチキンライスの特徴は、まず鶏肉の柔らかさなんだ。低温でじっくりと茹でた白切鶏(ポーチドチキン)は、箸で簡単に切れるほど柔らかくて、鶏本来の旨味がギュッと凝縮されているんだ。皮はプルプルで、肉はしっとり。これぞハイナンチキンの真髄だよ。
そしてライスが絶品なんだ。チキンを茹でたスープで炊いたライスは、鶏の油と旨味がしっかりと染み込んでいて、それだけでも美味しいんだよ。3種類のソース(ジンジャー、チリ、ダークソイソース)と一緒に食べると、もう箸が止まらないね。
朝の10時頃から売り切れまで営業しているけど、ランチタイムは30分以上並ぶこともあるんだ。でも、その価値は絶対にあるよ。一人前5.50SGDという価格も、この品質を考えれば破格だね。
場所: マックスウェル・フードセンター #01-10
営業時間: 火-日 10:00-19:30(月曜定休、売り切れ次第終了)
おすすめメニュー: ハイナンチキンライス(5.50SGD)、ローストチキンライス
2. Hill Street Tai Hwa Pork Noodle(ヒルストリート・タイワー・ポークヌードル)- クロフォード・レーン
――2番目のお店は?ミシュランスターのホーカーを教えて
Hill Street Tai Hwa Pork Noodleは、2016年にミシュラン一つ星を獲得した、世界で最も安いミシュラン星付きレストランなんだ。1932年から3代続く老舗で、創業90年以上の歴史を持つ伝説的なホーカーだよ。
ここの「バクチョーミー」(肉骨茶麺)は、シンガポールを代表するソウルフードなんだ。豚骨をじっくりと煮込んだ濃厚なスープに、コシのある細麺、そして柔らかく煮込まれた豚バラ肉とミンチがトッピングされているんだ。胡椒がピリッと効いていて、深いコクと上品な味わいが絶妙なバランスなんだよ。
3代目のタン・ウィリアムさんは、祖父から受け継いだレシピを忠実に守りながら、さらに改良を重ねているんだ。スープの煮込み時間、麺の茹で加減、豚肉の下処理まで、すべてが計算し尽くされているよ。
ミシュラン星獲得後は行列が絶えないけど、朝の早い時間(8:00頃)なら比較的空いているんだ。一杯5〜6SGDで、ミシュラン星付きの味が楽しめるなんて、他の国では絶対にありえないよね。
場所: クロフォード・レーン #01-12
営業時間: 火-日 9:00-15:00(月曜定休、売り切れ次第終了)
おすすめメニュー: バクチョーミー(5.50SGD)、ワンタンミー
3. 328 Katong Laksa(328カトン・ラクサ)- イーストコースト・ロード
――3番目のお店はどこ?シンガポール名物のラクサの有名店は?
328 Katong Laksaは、シンガポールの国民的料理「ラクサ」の老舗として、1963年から愛され続けている名店なんだ。カトン地区はプラナカン文化の中心地で、この店のラクサも正真正銘のプラナカン・ラクサなんだよ。
ここのラクサの特徴は、まずそのクリーミーで濃厚なスープなんだ。ココナッツミルクをベースに、海老、魚、スパイスを煮込んだスープは、甘さと辛さ、旨味が完璧にバランスされているんだ。特に海老の香りが強くて、一口飲むだけでプラナカン文化の深さを感じられるよ。
麺は太めの米麺「ビーフン」を使用していて、スープとよく絡むんだ。トッピングには海老、フィッシュケーキ、もやし、そして茹で卵が乗っていて、それぞれがスープの味を引き立てているんだ。
328 Katong Laksaのユニークなところは、スプーンだけで食べるスタイルなんだ。麺を短くカットしてあるから、箸を使わずにスプーンだけで完食できるんだよ。これもプラナカン文化の特徴の一つだね。
複数店舗があるけど、イーストコースト・ロードの本店が一番雰囲気があっておすすめだよ。
場所: イーストコースト・ロード本店他、複数店舗
営業時間: 月-日 9:00-21:00
おすすめメニュー: カトン・ラクサ(6.50SGD)、プラナカン・ラクサ
4. A Noodle Story(ア・ヌードル・ストーリー)- アムロイ・ストリート・フードセンター
――4番目のお店は?
A Noodle Storyは、2016年にミシュラン・ビブグルマンを獲得した、比較的新しいけれど実力派のホーカーなんだ。オーナーのベン・ショクとグウィナエル・ソテルはフランス料理の経験があって、伝統的なシンガポール料理にモダンなテクニックを融合させているんだよ。
ここの看板メニュー「ドライワンタンミー」は、伝統的なワンタンミーを現代風にアレンジした革新的な一品なんだ。自家製の麺は、卵麺と小麦麺をブレンドしたオリジナルで、もちもちした食感と小麦の香りが楽しめるんだ。
ソースが特に秀逸で、醤油ベースのタレに、オイスターソース、胡麻油、ラードなどを絶妙にブレンドしているんだ。さらに、イベリコ豚のチャーシューと手作りワンタンがトッピングされていて、まさに「ホーカー界のフランス料理」と言える完成度なんだよ。
価格は他のホーカーより少し高めの8〜10SGDだけど、その技術と味は絶対に価値があるね。特に海外から来た美食家たちには大人気で、「シンガポールのホーカー文化の進化」を感じられる店だと思うよ。
場所: アムロイ・ストリート・フードセンター #01-39
営業時間: 火-日 11:00-15:00、17:30-20:30(月曜定休)
おすすめメニュー: ドライワンタンミー(9.50SGD)、スープワンタンミー
5. Mr. and Mrs. Mohgan’s Super Crispy Roti Prata(モーガンズ・スーパー・クリスピー・ロティプラタ)- クリケット・クラブ・カフェテリア
――最後の5番目のお店は?
Mr. and Mrs. Mohgan’s Super Crispy Roti Prataは、シンガポールで最も有名なプラタ専門店なんだ。モーガンおじさんが40年以上にわたって作り続けているプラタは、「シンガポール一美味しいプラタ」として地元の人たちに愛されているんだよ。
モーガンズのプラタの特徴は、その「スーパー・クリスピー」という名前の通り、信じられないほどパリパリの食感なんだ。生地を何層にも重ねて伸ばし、高温の鉄板で焼き上げたプラタは、外側はカリカリ、内側はふわふわという絶妙な食感を実現しているんだ。
特に人気なのは「エッグプラタ」で、生地の中に卵を包み込んで焼いたもの。割ると中から半熟の卵が出てきて、それをプラタにつけて食べるのが最高なんだ。カレーソースとの相性も抜群で、スパイシーなカレーとクリスピーなプラタの組み合わせは、まさにシンガポールの多民族文化を象徴している味だよ。
モーガンおじさんは職人気質で、一枚一枚丁寧に手作りしているから、注文してから少し時間がかかることもあるんだ。でも、その分作りたての最高に美味しいプラタが食べられるから、待つ価値は十分にあるね。
場所: クリケット・クラブ・カフェテリア #01-06
営業時間: 月-日 6:00-12:00(売り切れ次第終了)
おすすめメニュー: エッグプラタ(2.20SGD)、プレーンプラタ、マトンカレー
ホーカーセンターでの正しい注文方法とマナー
――ホーカーセンターで注文する時のマナーや、観光客が知っておくべきことは?
ホーカーセンターでの食事にはいくつか独特のマナーがあるけど、基本的にはとてもカジュアルで気軽なんだ。でも、地元の人と同じように楽しむためには、いくつかのコツを覚えておくといいよ。
基本的な手順:
- 席を確保(チョープ): ティッシュペーパーやハンカチをテーブルに置いて席を確保する
- 注文: 各ストールに行って注文し、代金を支払う
- 席で待機: 料理が完成すると店員が持ってきてくれるか、呼ばれるまで席で待つ
- 食事: 料理を楽しむ
- 片付け: 食器はそのまま置いて帰る(清掃スタッフが片付ける)
「チョープ」文化は観光客には驚きかもしれないけど、これが効率的なシステムなんだ。ティッシュを置くだけで席が確保されるのは、シンガポール人の相互信頼に基づいた文化だよ。
注文時は、料理名を言って人数を伝えればOK。「One chicken rice」「Two laksa」みたいに簡単な英語で十分だね。多くのアンクルやアンティは英語、中国語、マレー語を話せるから、コミュニケーションで困ることはないよ。
――注文時のコツや、美味しく食べるためのポイントは?
美味しく食べるためのコツがいくつかあるんだ:
料理の見極め方:
- 地元の人が多く並んでいる店を選ぶ
- 料理の回転が早い店(新鮮な材料を使っている証拠)
- アンクルやアンティが長年やっている老舗
注文のコツ:
- 「Less spicy」(辛さ控えめ)や「More spicy」(もっと辛く)など、好みを伝える
- 「Takeaway」(持ち帰り)と「Eat here」(店内)を明確に伝える
- 小銭を用意しておく(多くの店は現金のみ)
食べ方のポイント:
- ラクサはスプーンで麺を短く切って食べる
- チキンライスは3つのソースを混ぜて味の変化を楽しむ
- プラタはカレーをつけながら手で食べる(フォークとナイフも可)
飲み物は別のストールで注文することが多いから、食事と一緒にドリンクも忘れずに注文してね。特に「コピ」(コーヒー)や「テ」(紅茶)は、シンガポールの伝統的な飲み物だから試してほしいな。
ホーカー体験をより深めるためのアドバイス
――観光客がシンガポールでホーカー文化を楽しむ時に、より本格的な体験をするためのコツは?
本格的なホーカー体験をしたいなら、観光地から少し離れた住宅街のホーカーセンターも訪れることをおすすめするよ。観光客が少なくて、より地元の日常を感じられるんだ。
朝の時間帯(7:00-9:00)にホーカーセンターに行ってみるといいね。地元の人たちが朝食を食べながら新聞を読んだり、友達と談笑している様子を見ることができるし、朝食メニューも充実しているんだ。
アンクルやアンティとの会話も楽しんでほしいな。「How long have you been cooking?」(どのくらい料理をされているんですか?)って聞けば、喜んで自分の料理への情熱を語ってくれるよ。シンガポールの人たちはフレンドリーだから、きっと面白い話が聞けるはずだ。
ホーカーセンターツアーに参加するのも良いアイデアだね。地元のガイドが各料理の歴史や食べ方を詳しく説明してくれるし、一人では注文しにくい料理にもチャレンジできるよ。
――初心者におすすめの楽しみ方や注意点は?
初心者の方には、まずは有名なホーカーセンターから始めることをおすすめするよ。マックスウェル・フードセンターやラオパサなら、観光客も多くて入りやすいし、英語表記も充実しているんだ。
食べ比べも楽しいから、一回の訪問で3〜4種類の料理を少しずつ注文してみるといいね。シェアして食べれば、より多くの料理を楽しめるよ。
注意点としては、辛い料理が多いから、辛いものが苦手な人は「No spicy」や「Less spicy」を伝えることを忘れずに。また、衛生面は政府が管理しているから安心だけど、氷入りドリンクが気になる人はホットドリンクを選ぶといいよ。
食器は使い捨ての場合もあるけど、陶器や金属製の場合は清拭されているから安心して使って大丈夫だ。食後は食器をそのまま置いて帰るのがマナーだから、片付けようとしなくていいよ。
写真撮影も基本的にOKだけど、調理中のアンクルやアンティを撮る時は一声かけるのが礼儀だね。みんな喜んでポーズを取ってくれるはずだよ。
まとめ
シンガポールのホーカー文化は、多民族国家としての理念と実用性が見事に融合した、世界でも類を見ない食文化システムです。政府の政策により安全で清潔に管理されながらも、各民族の伝統的な味が保たれ、さらに新しい創作料理も生まれ続けています。一つのホーカーセンターで世界中の料理を楽しめる贅沢さは、まさにシンガポールならではの体験です。
今回紹介した5つのホーカーズは、それぞれ異なる民族の料理と文化を代表する名店ばかり。伝統的な老舗から革新的なモダンホーカーまで、シンガポールのホーカー文化の多様性と深さを体験できる場所です。
重要なのは、料理を通じてシンガポールの多民族社会を理解し、地元の人々の日常に触れることです。「チョープ」という現地の習慣を実践し、アンクルやアンティとの会話を楽しめば、きっとシンガポールの人々との距離も縮まるはずです。
今回紹介したホーカーズのまとめ:
- 天天海南鶏飯 – 世界的に有名なハイナンチキンライスの老舗
- Hill Street Tai Hwa Pork Noodle – ミシュラン一つ星の伝説的バクチョーミー
- 328 Katong Laksa – プラナカン文化を代表するラクサの名店
- A Noodle Story – 革新的なモダンホーカーの代表格
- Mr. and Mrs. Mohgan’s – シンガポール一のクリスピープラタ
シンガポールのホーカー体験は、きっと忘れられない美味しい思い出となるでしょう。Shiok ah!(最高だ!)