現地人が教えるイタリアで人気の古城・遺跡5選

イタリアといえば、コロッセオやピサの斜塔といった有名な観光地が思い浮かびますが、実は観光客にはまだあまり知られていない魅力的な古城や遺跡が数多く存在します。今回は、ローマ在住10年のマルコさん(仮名)に、地元の人だからこそ知る特別な歴史の舞台を5つ教えてもらいました。これらの場所は、イタリアの深い歴史と文化を肌で感じられる、まさに隠れた宝石のような存在です。
イタリアの古城・遺跡が持つ特別な魅力
――マルコさん、観光客があまり訪れない古城や遺跡には、どんな魅力があるのでしょうか?
「イタリアの古城や遺跡の最大の魅力は、それぞれが異なる時代の物語を語ってくれることです。ローマ帝国から中世、ルネサンス期まで、各時代の建築技術や文化が融合している場所もあります。観光地化されていない分、静寂の中でじっくりと歴史に向き合えるんです。特に南イタリアには、イスラム文化やビザンツ文化の影響を受けた独特な建築物も多く、ヨーロッパの他の国では見られない文化の交差点を体験できます。」
1. カステル・デル・モンテ(プーリア州)- 謎に満ちた八角形の城
プーリア州アンドリアの郊外、なだらかな丘の上にそびえ立つカステル・デル・モンテは、13世紀に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によって建築された、八角形を象徴的に取り入れた設計の城です。
「この城は本当に不思議な存在なんです」とマルコさんは語ります。八角形の塔を8つめぐらせ、八角形の中庭を持つ八角形の城で、構造の全てが『8』という数字に関係しているのが特徴です。
歴史的背景
フリードリッヒ2世は「世界の驚異」と称される知識人で、ラテン語をはじめ9カ国語を話し、7カ国語で読み書きができた天才皇帝でした。城はイスラムや北欧のゴシック様式などの建築技術を取り入れ、上空から見ると八角形になるような幾何学的な構造になっています。
見どころ
- 石英を含んだ石灰岩の巨大な化粧ブロックでできており、日光にあたるとキラキラ輝いて美しく見える外観
- 完璧な八角形の幾何学的デザイン
- イスラム文化とキリスト教文化が融合した内装
アクセス情報
- 所在地: プーリア州アンドリア郊外
- アクセス: バーリから鉄道でアンドリアまで約1時間、アンドリアからバスで約40分
- 営業時間: 9:00-19:30(夏季)、9:00-18:30(冬季)
- 入場料: 10ユーロ
2. サンレオ城(エミリア=ロマーニャ州)- 切り立った崖の要塞
イタリア中部にある小さな町サンレオの、フェルトロ山という山の山頂に位置する城で、その切り立った崖にそびえる姿は迫力満点のサンレオ城。トリップアドバイザーの「死ぬまでに行きたい世界の名城25」にもピックアップされている有名な城です。
「サンレオ城は『天空の要塞』と呼ばれていて、まるで雲の上に浮かんでいるような錯覚に陥ります」とマルコさんは興奮気味に説明します。
歴史的背景
中世にサンマリノ共和国やウルビーノ公国の重要な軍事拠点として機能していました。後にローマ教皇領の牢獄としても使用され、多くの政治犯が幽閉された歴史があります。
見どころ
- 360度の絶景パノラマビュー
- 中世の軍事建築の傑作
- 神秘的な地下牢獄
- ルネサンス期の要塞建築
アクセス情報
- 所在地: エミリア=ロマーニャ州サンレオ
- アクセス: リミニから車で約1時間
- 営業時間: 9:00-19:00(夏季)、9:00-15:00(冬季)
- 入場料: 9ユーロ
3. カステル・デッラ・カステッルッチャ(ラツィオ州)- ローマ近郊の隠れた古城
1500年代に古城に住んでいた貴族が建設したプライベートチャペルがある、聖バルバラに捧げられた城です。ローマから車で約30分の場所にありながら、観光客にはほとんど知られていない隠れスポットです。
「ここは本当に特別な場所です。オリーブ畑や、ぶどう畑、イタリアらしいなだらかな丘陵地帯に囲まれ、高台から見渡す景色は、ため息が出るほど美しいんです」とマルコさんは語ります。
歴史的背景
16世紀に建設されたこの城は、ローマ貴族の別荘として使用されていました。現在でもプライベートな結婚式場として利用されており、古城での挙式は特別な体験として人気があります。
見どころ
- 聖バルバラに捧げられたプライベートチャペル
- ルネサンス期の貴族の生活を垣間見る内装
- トスカーナ風の美しい庭園
- ローマ郊外の田園風景
アクセス情報
- 所在地: ラツィオ州ローマ近郊
- アクセス: ローマから車で約30分
- 営業時間: 要予約(結婚式場として使用のため)
- 入場料: ガイドツアー15ユーロ
4. アルベロベッロのトゥルッリ群(プーリア州)- おとぎ話の世界
真っ白に塗られた壁と三角帽のような屋根がユニークな、この地方特有の住居トゥルッリが連なる町、アルベロベッロ。世界遺産に登録されているものの、まだまだ穴場感のある特別な場所です。
「トゥルッリは16世紀からの伝統的な建築様式で、石を積み上げただけでモルタルを使わない独特な工法で建てられています」とマルコさんは説明します。
歴史的背景
トゥルッリは税金逃れのために考案された建築様式という説があります。領主が税務調査に来ると、簡単に解体できるよう設計されていたとされています。
見どころ
- 1,000軒以上のトゥルッリが建ち並ぶ景観
- 伝統的な石積み建築技術
- 屋根に描かれた神秘的なシンボル
- 地元職人による手工芸品ショップ
アクセス情報
- 所在地: プーリア州アルベロベッロ
- アクセス: バーリから電車で約1時間30分
- 営業時間: 町なので24時間見学可能
- 入場料: 無料(博物館は3ユーロ)
5. カステルガンドルフォ(ラツィオ州)- 教皇の避暑地
アルバーノ湖のほとりにある美しい小さな街で、かつてローマ教皇の避暑地として利用していたことで知られています。観光客があまりいない隠れスポットとして、イタリア市民にも人気の場所です。
「ここはローマから電車で40分ほどなのに、まるで別世界のような静寂があります」とマルコさんは推薦します。
歴史的背景
17世紀から20世紀まで、代々のローマ教皇が夏の離宮として使用していました。現在でも教皇庁の所有ですが、一部が博物館として公開されています。
見どころ
- 避暑用の山荘であったガンドルフォ城が湖畔の丘の上にたたずみ、のどかで幻想的な風景
- アルバーノ湖の美しい景観
- 教皇の庭園(特別ツアーで見学可能)
- 天体観測所
アクセス情報
- 所在地: ラツィオ州カステルガンドルフォ
- アクセス: ローマ・テルミニ駅から電車で約40分
- 営業時間: 城:10:00-18:00、庭園ツアー:要予約
- 入場料: 城と庭園ツアーセット16ユーロ
現地の人からのアドバイス
服装について 古城や教会系の遺跡を訪れる際は、肩と膝を覆う服装が必要です。特に夏場でも長袖の上着を持参することをお勧めします。
ベストシーズン 春(4-5月)と秋(9-10月)が最も適しています。夏は暑く、冬は一部の城が閉館する場合があります。
予約について 「人気の古城は事前予約が必須です。特にカステル・デル・モンテは混雑するので、オンラインで予約してから行きましょう」とマルコさんはアドバイスします。
地元の文化への敬意 これらの場所は地元の人々にとって大切な文化遺産です。大声で話したり、許可されていない場所に立ち入ったりしないよう注意しましょう。
まとめ
イタリアの隠れた古城・遺跡は、ガイドブックには載らない特別な体験を提供してくれます。それぞれが異なる時代の物語を持ち、イタリアの豊かな歴史と文化の多様性を物語っています。観光地化されていない分、ゆっくりと歴史の重みを感じながら、本当のイタリアの美しさに出会うことができるでしょう。
次回訪問時に: これらの場所を訪れる際は、現地の小さなレストランで地元料理を味わったり、地元の職人が作る工芸品を購入したりして、地域経済に貢献することも旅の醍醐味の一つです。