【ロシアの文化を学ぶ!】ロシアの食文化の日本との違い5選 ~留学、長期滞在、移住、短期滞在・旅行の参考に~

グローバル化が進む中、異文化理解の一環として食文化を知ることは、その国の人々の生活や価値観を深く理解する手がかりとなります。ロシアと日本は地理的には近い関係にありながら、食文化においては大きく異なる点が多くあります。本コラムでは、ロシアの食文化に焦点を当て、日本との違いを5つの側面から詳しく解説します。
ロシアってどんな国? 日本からのイメージ
ロシアといえば、広大な国土、厳しい冬、マトリョーシカ人形、ウォッカなどが一般的なイメージでしょう。食に関しては、ボルシチやピロシキなどがよく知られていますが、実際のロシア料理はもっと多様で奥深いものです。
ロシアはユーラシア大陸に広がる世界最大の国土を持ち、11のタイムゾーンにまたがります。これだけの広さがあれば、当然地域によって気候も文化も大きく異なります。寒冷なシベリアから、比較的温暖な黒海沿岸まで、その環境の違いは食文化にも反映されています。
多民族国家でもあるロシアには、ロシア人だけでなく、タタール人、ウクライナ人、アルメニア人など様々な民族が暮らしており、それぞれが独自の食文化を持っています。さらに、ソビエト時代には15の共和国が存在し、各地の料理が首都モスクワに集まったという歴史的背景もあり、現代のロシア料理は多様な影響を受けています。
ロシアで暮らす/ロシアに行くメリットについて
豊かな食文化体験
ロシアの食文化は、その広大な国土と多様な民族性を反映して非常に豊かです。シベリアの独特の保存食から、ウクライナ風のボルシチ、コーカサス地方のシャシリク(串焼き)まで、地域ごとに異なる料理を楽しむことができます。
手頃な価格の外食
特に地方都市では、食事の価格が日本と比べて格段に安いケースが多いです。モスクワやサンクトペテルブルグでも、地元の人が通うような店であれば、リーズナブルな価格で美味しい料理を楽しめます。
市場文化の体験
「リノク」と呼ばれる市場では、新鮮な果物や野菜、乳製品、肉などが売られており、地元の食材に触れる貴重な機会となります。特に夏から秋にかけては、色とりどりのベリー類や新鮮なきのこなど、季節の産物が豊富です。
家庭料理の温かさ
ロシア人は客人をもてなすことを非常に大切にします。知り合いの家に招かれれば、たくさんの手料理でもてなされる機会も多いでしょう。その温かいおもてなしの心に触れることは、旅の中でも特別な思い出になるはずです。
① ロシアの食文化の日本との違い(食事)
食事のリズムとタイミング
日本では三食ほぼ同じ重要度で、夕食を重視する傾向がありますが、ロシアでは昼食が最も重要な食事です。「オーベット」と呼ばれる昼食は温かいスープから始まり、メインディッシュ、そしてコンポート(果物のシロップ煮)やキセーリ(澱粉で固めた飲み物)などで締めくくります。
朝食は比較的簡単で、カーシャ(オートミールなどの穀物のお粥)やサンドイッチ、紅茶などが一般的です。夕食も昼食ほど重くなく、パンとハム、チーズなどの軽めの食事を取ることも珍しくありません。
食事の構成と順番
日本では一汁三菜が理想とされ、ご飯と味噌汁、おかずを同時に食べるのが一般的です。対してロシアでは、スープから始まり、メインディッシュ、デザートという欧米的な順番で食事が進みます。特に正式な食事では、前菜(ザクースカ)、スープ、メインディッシュ、デザートという流れが守られます。
また、日本では「一品完結型」の料理が多いのに対し、ロシアではメインディッシュと付け合わせという組み合わせが基本で、肉や魚の料理に茹でたジャガイモやそばが添えられるのが一般的です。
調味料と味付けの違い
日本料理は醤油や味噌、みりんなど、独特の調味料による繊細な味付けが特徴です。対してロシア料理は、サワークリーム、ディル、パセリなどのハーブ、塩、コショウが中心で、素材の味を活かしながらも、濃厚でしっかりとした味わいを持つものが多いです。
特に「スメタナ」と呼ばれるサワークリームはロシア料理に欠かせない存在で、ボルシチやソリャンカなどのスープにも加えられます。また、ロシアの食卓には必ず「ヒレーブ」(パン)があり、特にライ麦パンは食事に欠かせません。
② ロシアの食文化の日本との違い(会話)
食事中の会話の位置づけ
日本では「食事中はおしゃべりしない」という教えもありますが、ロシアでは食事は会話を楽しむ重要な社交の場です。特に長時間にわたる正式な食事では、様々な話題について活発に議論することが珍しくありません。政治や文学、芸術など、日本ではテーブルでは避けられがちな真面目な話題も、食事を通じて深く語り合われます。
乾杯の文化
ロシアの食事、特に祝いの席では、乾杯のスピーチが欠かせません。日本では「乾杯!」で済ませることが多いですが、ロシアでは最初にホストが長めのスピーチを行い、その後参加者それぞれが順番に立ち上がってスピーチをすることもあります。
「За здоровье!(ザ・ズダローヴィエ:健康のために!)」「За дружбу!(ザ・ドゥルージブ:友情のために!)」などの乾杯の掛け声とともに、特にウォッカは一気に飲み干すのが伝統的な作法です。飲み物だけでなく、何かを食べながら飲むことも重要で、これを「закуска(ザクースカ:つまみ)」と呼びます。
もてなしの違い
日本では「おもてなし」として控えめな気配りが重視されますが、ロシアのもてなしは豪快で積極的です。訪問客には次から次へと料理を勧め、飲み物をついで回るのが一般的。断りにくい雰囲気もありますが、これはホスト側の温かさと寛大さの表れと理解すると良いでしょう。
「客人は神様」というロシアのことわざにあるように、訪問者に対して最大限のもてなしをするのがロシアの伝統です。特に家庭に招かれた際には、テーブルいっぱいの料理が用意され、何度もおかわりを勧められることを覚悟しておきましょう。
③ ロシアの食文化の日本との違い(記念日/祝日)
新年のお祝い
日本では正月に和食中心の特別料理(おせち)を食べますが、ロシアの新年は12月31日から1月1日にかけて盛大に祝われ、「サラート・オリヴィエ」(マヨネーズベースのポテトサラダ)、「シャンパンスコエ」(スパークリングワイン)、「セリョートカ・ポット・シューボイ」(ニシンの毛皮のコートと呼ばれる層状サラダ)など特徴的な料理が並びます。
宗教行事と食
日本の祝日はもともと宗教的な由来を持つものも多いですが、現代では宗教色は薄れています。一方ロシアでは、正教会の影響が食文化にも色濃く残っています。特に復活祭(パスハ)は最も重要な祝日の一つで、「クリーチ」(円筒形の甘いパン)や「パスハ」(カッテージチーズでできた三角錐形のデザート)、色とりどりに染めた卵が特別な食べ物として用意されます。
「マースレニツァ」(謝肉祭)
ロシア独特の祭りに「マースレニツァ」があります。これは大斎(レント)の前の1週間で、冬との別れ、春の訪れを祝う祭りです。この期間には「ブリヌイ」(ロシア風のクレープ)を大量に食べます。太陽の象徴とされる丸いブリヌイは、家庭で手作りされ、キャビア、サワークリーム、ジャム、蜂蜜など様々な具材と一緒に食べられます。
日本にも季節の節目を祝う文化はありますが、特定の食べ物と結びついたこのような祭りは特徴的です。
④ ロシアの食文化の日本との違い(おふくろの味)
家庭料理の重要性
日本もロシアも家庭料理を大切にする文化がありますが、その内容は大きく異なります。ロシアの家庭料理の代表格には、「シチー」(キャベツのスープ)、「カーシャ」(穀物のお粥)、「コトレータ」(肉団子)などがあります。
特に「バーブシカ(おばあちゃん)の料理」は憧れの対象で、多くのロシア人が子供時代に祖母が作ってくれた料理に郷愁を感じています。日本でも「おばあちゃんの味」は特別ですが、ロシアではさらにその傾向が強いかもしれません。
保存食の文化
厳しい冬を乗り切るため、ロシアには豊富な保存食文化があります。「ソレーニエ」(野菜の塩漬け)、「バレーニエ」(ジャム)、「グリブイ」(きのこの保存)などは、夏から秋にかけて収穫した食材を冬まで保存するための知恵です。
特に「ダーチャ」と呼ばれる郊外の別荘で自家栽培した野菜や果物を使った保存食作りは、今でも多くの家庭で大切にされている伝統です。日本にも漬物や佃煮など保存食はありますが、ロシアでは家庭で大量に作る文化がより根強く残っています。
「アブシュチーイ・ストール」の文化
「アブシュチーイ・ストール」とは「共有のテーブル」という意味で、大家族や友人が集まって一緒に食事を楽しむロシアの伝統です。テーブルには様々な料理が並び、みんなで分け合って食べます。
日本の「鍋を囲む」文化に近いものがありますが、ロシアではより多くの種類の料理を同時に楽しむ点が特徴的です。特に祝日や特別な日には、テーブルが料理で埋め尽くされるほど豪華に食事が用意されます。
⑤ 知っておきたいロシアの文化(その他)
茶文化の違い
日本には「茶道」という独自の文化がありますが、ロシアにも独自の茶文化があります。「サモワール」と呼ばれる伝統的な湯沸かし器でお茶を沸かし、「ピアーラ」(茶碗)で飲むのが伝統的なスタイル。紅茶に砂糖やジャム、レモンを加えて飲むのが一般的です。
特徴的なのは、砂糖を紅茶に直接入れるのではなく、砂糖を口に含んでからお茶を飲む「ヴプリクーシク」という飲み方もあることです。これは特に地方やお年寄りの間で見られる習慣です。
パンの重要性
日本では主食としてご飯(米)が重要ですが、ロシアではパン、特に「チョールヌイ・フレープ」(黒パン、ライ麦パン)が食事に欠かせません。「パンと塩は食事の基本」ということわざがあるほど、パンはロシア人の食生活にとって根本的なものです。
伝統的に、大切な客人を迎える際には「フレープ・ダ・ソーリ」(パンと塩)でもてなします。これは、美しく飾られたタオルの上にパンと塩を乗せて出迎える習慣で、古くからの歓迎の証です。
季節の食材への敬意
日本と同様、ロシアでも季節の食材を大切にします。特に短い夏に収穫される様々なベリー類(ストロベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリーなど)や、秋の森で採れるきのこ類は珍重されます。
「ティホータ・オホータ」(静かな狩り)と呼ばれるきのこ狩りは、多くのロシア人が楽しむ秋の恒例行事です。日本でも山菜採りやきのこ狩りの文化はありますが、ロシアではより一般的な活動と言えるでしょう。
まとめ
ロシアの食文化は、その広大な国土と長い歴史、そして過酷な気候条件の中で育まれてきました。日本の繊細さとは対照的な、豪快さと温かさが特徴と言えるでしょう。
食事を通じた社交を重んじるロシアの文化は、個人主義的な傾向が強まる現代社会において、人と人とのつながりの大切さを改めて教えてくれます。また、季節の恵みを大切にし、自然の産物から様々な保存食を作る知恵は、持続可能な食生活を考える上でも参考になるものです。
もし機会があれば、本場のロシア料理を味わったり、ロシア人の家庭に招かれて食事を共にしたりすることで、きっと素晴らしい文化交流の体験ができるでしょう。食は言葉の壁を超えて人々をつなぐ、最も効果的な手段の一つなのです。
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