アメリカを舞台としたおすすめ映画6選!アメリカのストリートカルチャー満載

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犯罪や暴力が隣り合わせの低所得者地域“フッド”を舞台に、黒人の若者やストリート・ギャングの生活を描くフッド・ムービー。アメリカの社会に根深く蔓延った人種差別問題を知る上でも見ておいて損のない名作が数多くあります。今回は、フッド・ムービーおすすめの作品をご紹介します。

そもそもフッド・ムービーとは?​

“Hood(フッド)”はneighborhood(ネイバーフッド)のスラングで、地元とか近所という意味。大都市周辺部の低所得者地域を指し、住民は黒人やラティーノなどのマイノリティによって構成されます。この“フッド”を舞台に、若者やストリート・ギャングのライフスタイルを描くのがフッド・ムービーです。貧困や暴力、犯罪、ドラッグ、また制度的人種主義といったテーマがしばし取り上げられます。

 

フッド・ムービーの魅力は、なんといっても作品全体を貫くストリート・スタイル。

ヒップホップ、特に90年代に隆盛を極めたギャングスター・ラップとは密接な関係にあり、アイス・T、アイス・キューブ、2パック(トゥパック・シャクール)など、同時代のヒップホップシーンを牽引した数々のラップスターが俳優として出演しています。

もう一つの魅力は、いわゆるブロックバスターではあまり描かれない、マイノリティの生活やアメリカ社会の暗部ともいうべき部分を知ることができる点。綺麗にパッケージングされた“アメリカ”では味わえない、ざらりとしたストリートの肌触りを感じられるのです。

80年代から始まるフッド・ムービーの歴史

1990年代に全盛期を迎えるフッド・ムービーですが、その萌芽は80年代から見られます。

1982年に封切られた『Wild Style(監督:チャーリー・エーハン)』は、ニューヨークを舞台に、グラフィティ、DJ、ラップ、ブレイクダンスなどの黒人文化にフィーチャーした作品。ヒップホップ黎明期の空気感を余すところなく描いています。

ちなみに本作は、ニューヨークに先立って日本で初公開され、日本にヒップホップカルチャーを紹介するきっかけとなりました*。

 

また1988年には、デニス・ホッパーが監督した『Colors 天使の消えた街』が公開。ロサンゼルス市警ギャング対策班とストリート・ギャングの抗争を描く本作の商業的な成功によって、ストリート・ギャングの生活が広くアメリカの大衆に知られることとなりました。

 

1989年に公開された『ドゥ・ザ・ライト・シング(監督:スパイク・リー)』も、ジャンルの発展に大きく寄与しています。スパイク・リーは人種差別に切り込む作品で知られており、本作もそのひとつ。黒人やイタリア系など、さまざまな人々が住むブルックリンのベッドフォード=スタイベサントという地区を舞台に、民族間の軋轢を描きます。

これら80年代の作品を皮切りに、ギャングスター・ラップと絡み合いながら、さまざまなフッド・ムービーが作られていくことになります。

 

おすすめのフッド・ムービー6選

ここからは、ぜひ見ておきたいフッド・ムービーをご紹介。

ボーイズン・ザ・フッド(1991年)

あらすじ

犯罪多発地区として有名なロサンゼルス、サウスセントラル地区。この危険な街でトレ、リッキー、ダウボーイの幼友達は生まれ育った。トレは厳格な父フューリアスのもとで育てられ、恋人と堅実な生活を夢見る若者。リッキーはフットボールの名選手でスカウトが来るほどの有望株。かたや兄のダウボーイはストリート・ギャングに身を持ち崩してしまっていた。そんな3人に凶悪なギャング集団クレンショー組が突然襲撃を仕掛けて来た!(DVDより)

23歳のジョン・シングルトン監督は、本作でアフリカ系アメリカ人として最初にアカデミー監督賞にノミネート。

物語の冒頭から、黒人の子どもたちが置かれた社会環境が示唆されます。通学路の壁に穿たれた弾痕、当たり前のようにマフィアという単語を口にする子ども、画面には映らないものの、常にバックグラウンドで聞こえる警察ヘリのローター音……。アメリカの社会構造に組み込まれた制度的人種主義の実態が浮き彫りになっています。『ポケットいっぱいの涙』とともに、まず押さえたい作品。

 

ニュー・ジャック・シティ(1991年)

あらすじ

数年前までは縄張り争いを繰り返すチンピラだったニーノ・ブラウン。彼はクラックに手を染めた時から暗黒街の階段を急速に昇り始め、一大ドラッグ帝国ニュー・ジャック・シティを築き上げる。しかし、麻薬捜査官たちの執拗な追及によって、帝国崩壊の危機を迎えるのだが……。(DVDより)

『ボーイズン・ザ・フッド』『ポケットいっぱいの涙』などのComing of Ageムービーの要素が強い作品とは異なり、エンタテイメント性の強いクライム・ムービー。スピード感のあるアクション描写とアイス・Tが手掛けたトラックが相まって見応えがあります。アメリカのドラッグ問題を克明に描き出した作品です。アイス・Tが麻薬捜査官役として出演。

 

Juice(1992年)

あらすじ

ハーレムに住む高校生4人組Q、ラヒーム、スティール、ビショップは学校へも行かず、対立するラダメス率いるラテン系グループとケンカをしたり、万引きをしたりして街をうろついている。ある日4人は知り合いが店に強盗に入る現場に出くわし、ビショップが強盗に加担しようとするが他の仲間が止める。それをきっかけに彼らは拳銃を手に入れ、悪戯半分で強盗プランを立てることになる……。(DVDより)

前半はハーレムに住む悪ガキ高校生たちの青春ムービーといった趣き。彼らの身振りやファッションなどのスタイルも見どころ。しかし、強盗現場を目撃したところから雲行きが怪しくなっていきます。鍵となる人物を演じるのがラッパーの2パックです。

荒廃した環境でもそれなりに真っ当に生きようとする若者が、抗いがたく犯罪に巻き込まれていく様子は、本作に限らずフッド・ムービーでよく描かれます。

2パックの人生を描いた『オール・アイズ・オン・ミー』という映画もおすすめ。

ポケットいっぱいの涙(1993年)​

あらすじ

母をヘロイン中毒で亡くし、父は麻薬取引のもつれで殺されたケインは、高校卒業を迎えたある夜、友人ドッグが食料品店主を殺害する現場に居合わせてしまう。ケインは殺人を自慢するドッグを嫌悪するが、そんな中、従兄弟のハロルドがストリートギャングに襲撃される!暴力、ドラッグが日常の毎日を生きる友人たちに巻き込まれていくケインだが……。(DVDより)

原題は『Menace II Society』。menaceは「脅威」という意味。
主人公は、子どもの頃からドラッグや殺人が日常的な環境で育ちます。口論の末にカッとなって銃で相手を撃ち殺す、対立するストリート・ギャングが報復しあう……。そこに過剰な演出はなく、あっさり人が死んでいく。淡々とした主人公のモノローグが、かえって彼らの“日常”感を際立たせています。暴力的なシーンの多さに反して、全体的に静かで物憂げな印象を受ける作品です。

8マイル(2002年)

あらすじ

1995年――ミシガン州デトロイト。そこに境界線となる“8マイル・ロード”は都市と郊外、さらに白人と黒人を分ける分割ラインにもなっている。没落した貧民街に暮らすジミーは、貧しい母子家庭で母親は若い男と自堕落な暮らしを送り、幼い妹の面倒を見なければならない。(Amazon Prime Videoより)

ラッパー、エミネムの半自伝的な作品で、本人が主演しています。ここまで紹介した作品は黒人に焦点を当てていたのに対して、エミネム演じる主人公は「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる貧困層の白人。

成り上がり音楽モノとして楽しめる分、鑑賞のハードルが下がるかもしれません。音楽が主題の作品は暴力描写が苦手な方にもおすすめです。

 

ストレイト・アウタ・コンプトン(2015)​

あらすじ

1986年、アメリカで最も危険な街、カリフォルニア州コンプトン。イージー・Eはドラッグ業で生活をしていたが、ある日ヒップホップカルチャーに未来を見出し、音楽ビジネスを始める。そして彼はDJのドクター・ドレー、ラッパーのアイス・キューブたちとストリート発のラップグループ“N.W.A.”を結成する。一躍スターダムにのし上がった彼らだが、理不尽な権力からの暴力により弾圧される。しかし、彼らは音楽と言葉を武器に、それらに立ち向かっていった……。(DVDより)

こちらはフッド・ムービー全盛期の90年代より少し後、2010年代に公開されました。ギャングスター・ラップの伝説的グループ『N.W.A.』の結成、そして彼らの過激な音楽がやがて社会現象を巻き起こしていく様子を描きます。90年代の音楽シーンを知るとよりこのジャンルを楽しめるのではないでしょうか。ライブシーンが圧巻で、音楽映画としても楽しみやすい作品です。

【まとめ】英語を活用して世界を広げませんか?

フッド・ムービーについてご紹介しました。
なかなかヘヴィで暴力的な描写も多いため、ちょっと消耗してしまうかもしれません。

筆者は、アメリカ留学時代にブルックリンのラティーノやカリビアン系のネイバーフッドを転々としていたことがあります。直接的に犯罪に巻き込まれた経験こそないとはいえ、当時住んでいた部屋のすぐ近くで10代の少年が銃撃に巻き込まれて亡くなったこともありました。銃声が聴こえたことは一度や二度ではありません。

 

“フッド”のリアリティは、アメリカという国を多角的に見る上でも手助けになるはず。英語を学習している方、アメリカに興味がある方は、ぜひ一度フッド・ムービーに触れてみてください。

 

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この記事を書いた世界人

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