現地人が教えるフランスで人気のおすすめパン屋さん5選

フランスといえば、世界最高峰のパン文化を誇る国として知られています。パリだけでも1,200軒以上のブーランジェリー(パン屋)があると言われ、伝統的な製法で作られる本格的なフランスパンは、現地の人々の日常生活に欠かせない存在となっています。
そこで今回は、パリ在住20年のピエールさん(仮名)に、観光ガイドには載っていない、現地人だからこそ知る本当に美味しいパン屋さんを5つ教えてもらいました。伝統的なブーランジェリーから革新的なアルチザンベーカリーまで、本物のフランスパン体験をお届けします。
フランスのパン文化の基本と背景
――フランスのパン文化って、フランス人からするとどんな意味を持ってるの?簡単に説明してもらえる?
フランス人にとってパンは単なる食べ物以上の意味があるんだよ。まず「identité française」(フランスのアイデンティティ)の核心的な部分なんだ。
特にフランスでは「culture du pain」(パン文化)が何世紀にもわたって根付いていて、朝食、昼食、夕食のすべてでパンが欠かせない存在なんだ。朝のクロワッサンとカフェ、昼のサンドイッチ、夜のバゲットとチーズという具合に、一日の食事がパンを中心に組み立てられているんだよ。
それから、パンは「art de vivre」(生活の芸術)の象徴でもあるんだ。毎朝近所のブーランジェリーに新鮮なパンを買いに行くのは、単なる買い物ではなく、「rituel quotidien」(日常の儀式)なんだよ。ブーランジェとの会話、パンの香り、焼きたての温かさ、すべてがフランス人の生活の質を高めているんだ。
「savoir-faire français」(フランスの技術・技能)も重要な要素で、各地域には独自のパンがあって、それが地域のアイデンティティと密接に結びついている。パリのバゲット、ブルターニュのパン・ド・カンパーニュ、アルザスのクーゲルホフなど、地方色豊かなパン文化があるんだよ。
法的な側面も興味深くて、フランスにはパンの品質を保つための「loi sur le pain」(パン法)があるんだ。バゲットの材料や製法、価格まで規定されていて、それだけパンがフランス社会にとって重要だということなんだよ。
――日本人とフランス人では、パンに対する考え方ってどう違うと思う?
これは本当に興味深い違いがあるね!日本人とフランス人ではパンへのアプローチが結構違うと思うよ。
まず、freshness(新鮮さ)に対する考え方が違うんだ。フランス人は「pain du jour」(その日のパン)を絶対的に重視していて、昨日のパンは基本的に食べないんだ。一方、日本人はパンを何日か保存して食べることに慣れているよね。
食べ方も大きく異なるよ。フランス人はパンを「accompagnement」(付け合わせ)として捉えていて、チーズ、バター、ジャム、料理と一緒に食べるのが基本なんだ。でも日本人はパン自体を主役として、そのままの味を楽しむことが多いようだね。
時間に対する感覚も違うかな。フランス人は毎朝ブーランジェリーに行くのを「temps précieux」(貴重な時間)として楽しんでいるんだ。急いでいても、ブーランジェとの軽い会話を交わすのがマナーなんだよ。
あとは、パンの種類に対する知識も異なるね。フランス人は様々なパンの特徴や用途を熟知していて、料理に合わせてパンを選ぶのが当たり前なんだ。魚料理にはパン・ド・セーグル、チーズにはバゲット、スープにはパン・ド・カンパーニュといった具合にね。
価格に対する感覚も、フランス人はパンを「投資」として考えていて、少し高くても良いパンを買うことを躊躇しないんだ。quality over quantity の精神が根付いているんだよ。
現地人おすすめ!フランスで人気のパン屋さん5選
1. Poilâne(パリ・サンジェルマン・デ・プレ地区)
――まず最初におすすめのパン屋さんを教えて
パリのサンジェルマン・デ・プレ地区にある「Poilâne」は、間違いなく外せない伝説的なブーランジェリーだね。1932年から続く家族経営のパン屋で、パリ市民の間では「roi du pain」(パンの王様)として愛され続けているんだ。
観光客には「Du Pain et des Idées」や「Eric Kayser」が有名だけど、現地人の間ではPoilâneの「Pain Poilâne」が圧倒的に人気なんだよ。直径約40cmの巨大な円形のパン・ド・カンパーニュで、「levain naturel」(天然酵母)を使って薪窯で焼かれた伝統的な製法なんだ。
ここの秘密は、80年以上継ぎ足されている「levain mère」(マザー酵母)と、独自の小麦粉ブレンドなんだ。外皮は香ばしくてパリッとしていて、中身はもっちりとした食感で、深い酸味と甘みが特徴的なんだよ。一切れ食べると、小麦の香りと酵母の複雑な風味が口の中に広がるんだ。
店内には巨大な薪窯があって、職人たちが伝統的な長い木のペールで「enfournage」(窯入れ)する様子を見ることができる。3代目のアポロニア・ポワラーヌが今も祖父の製法を忠実に守り続けているんだよ。
一個(約2kg)で25ユーロと少し高めだけど、一週間は美味しく食べられるし、その品質を考えれば納得の価格だね。
住所: 8 Rue du Cherche-Midi, Saint-Germain-des-Prés, Paris
営業時間: 月-土 7:15-20:15(日曜休み)
おすすめパン: Pain Poilâne、Punitions(小さなバタークッキー)
2. Boulangerie Julien(パリ・マレ地区)
――2番目のパン屋さんは?
マレ地区にある「Boulangerie Julien」は、伝統的なクロワッサンとパン・オ・ショコラで有名な隠れた名店なんだ。1985年創業の小さな家族経営のブーランジェリーで、地元のパリジャンたちに「meilleur croissant du Marais」(マレ地区最高のクロワッサン)として愛されているんだよ。
ここのクロワッサンは、本物の「pâte feuilletée」(パイ生地)を使って、「feuilletage」(層作り)を27層まで重ねた本格的な製法なんだ。バターはノルマンディー産の「beurre AOP」(原産地統制バター)だけを使っていて、その風味と香りは他では味わえないんだよ。
朝8時頃に焼きたてが出てくるんだけど、外はサクサク、中はふんわりとした完璧な食感で、バターの風味が口の中でとろけるんだ。現地の人たちは朝のカフェと一緒に食べるのが定番で、特に日曜日の朝には行列ができることもあるよ。
パン・オ・ショコラも絶品で、中のチョコレートは「chocolat Valrhona」(ヴァローナチョコレート)を使っていて、甘すぎずビターな大人の味なんだ。地元の人は「petit déjeuner parfait」(完璧な朝食)として、クロワッサンと一緒に注文することが多いね。
価格も良心的で、クロワッサン1個1.50ユーロ、パン・オ・ショコラ1個1.80ユーロという地元価格なんだ。
住所: 75 Rue Saint-Antoine, Le Marais, Paris
営業時間: 火-土 7:00-20:00、日 7:00-14:00(月曜休み)
おすすめパン: Croissant、Pain au Chocolat、Pain aux Raisins
3. L’Ami Jean(パリ・エッフェル塔地区)
――3番目のパン屋さんは?
エッフェル塔地区にある「L’Ami Jean」は、バスク地方の伝統的なパンで有名な特別なブーランジェリーなんだ。オーナーのジャンさんはバスク出身で、パリに故郷の味を持ち込んだパイオニアなんだよ。
ここで絶対に試してほしいのは「Pain de maïs」(トウモロコシパン)だね。バスク地方の伝統的なパンで、「farine de maïs」(コーン粉)を30%配合した独特のパンなんだ。黄色い色合いが美しく、ほんのりとした甘みとモチモチした食感が特徴的なんだよ。
もう一つの名物は「Taloa」という平たいパンで、これもバスク地方の伝統的なパンなんだ。「jambon de Bayonne」(バイヨンヌハム)や「fromage de brebis」(羊のチーズ)と一緒に食べるのが本場の食べ方で、シンプルだけど奥深い味わいなんだ。
店内はバスクの装飾で飾られていて、「pelote basque」(バスクボール)のラケットや伝統的な「makila」(バスクの杖)などが展示されている。ジャンさんが故郷の話をしながらパンを売ってくれるのも、この店の魅力の一つだね。
パリでは珍しいバスクパンが味わえる貴重な場所で、特にバスク地方を訪れたことがある人には懐かしい味として人気なんだよ。
住所: 27 Rue Malar, 7ème arrondissement, Paris
営業時間: 月-土 7:30-19:30(日曜休み)
おすすめパン: Pain de Maïs、Taloa、Pain Basque
4. Du Pain et des Idées(パリ・レピュブリック地区)
――4番目のパン屋さんは?
レピュブリック地区にある「Du Pain et des Idées」は、2002年にオープンした比較的新しいブーランジェリーだけど、すでにパリのパン界で革命的存在として認められているんだ。オーナーのクリストフ・ヴァスールは、伝統的な製法と現代的な感性を組み合わせた「artisan boulanger」なんだよ。
ここの名物は「Pain des Amis」という独特の形をしたパンで、「poolish」(ポーリッシュ発酵)という古い製法を復活させたものなんだ。24時間以上発酵させた生地は、深い味わいと複雑な香りを持っていて、噛むほどに小麦の甘みが感じられるんだよ。
「Escargot」(エスカルゴ)というカタツムリ型のヴィエノワズリーも人気で、ピスタチオやレーズン、チョコレートなど様々なフィリングが楽しめるんだ。見た目も美しくて、「pâtisserie」のような繊細さがあるんだよ。
店内は19世紀の古いブーランジェリーの内装をそのまま残していて、古いタイルや木製の棚が歴史を感じさせる。でも売られているパンは最先端の技術と伝統の融合で、まさに「tradition et innovation」を体現している場所なんだ。
少し価格は高めだけど(Pain des Amis 1個4ユーロ)、その技術と味わいを考えれば納得の価値があるね。
住所: 4 Rue Yves Toudic, République, Paris
営業時間: 月-金 6:45-20:00(土日休み)
おすすめパン: Pain des Amis、Escargot Pistache、Chausson aux Pommes
5. Eric Kayser(パリ・モンパルナス地区)
――最後の5番目のパン屋さんは?
モンパルナス地区にある「Eric Kayser」本店は、現代フランスパン界の巨匠エリック・カイザーが1996年にオープンした旗艦店なんだ。今や世界中に展開しているブランドだけど、この本店では創始者の哲学と技術が最も純粋な形で体験できるんだよ。
ここの革新的な点は「levain liquide」(液体酵母)の開発で、従来の天然酵母よりも軽やかで消化しやすいパンを作ることに成功したんだ。特に「Baguette Monge」は、外皮は薄くてパリッと、中身はもちもちで気泡が大きく、小麦の香りが際立つ現代的なバゲットなんだよ。
「Pain aux Céréales」(穀物パン)も人気で、7種類の穀物とシードを使った栄養価の高いパンなんだ。健康志向のパリジャンたちに愛されていて、朝食やランチに最適なんだよ。
店内は洗練されたモダンなデザインで、ガラス張りの工房では職人たちが作業している様子を見ることができる。「transparence」(透明性)というコンセプトで、パン作りのプロセスを顧客に見せているんだ。
エリック・カイザー自身が開発した特殊な小麦粉や酵母も販売していて、家庭でも本格的なパン作りが楽しめるようになっているよ。
住所: 14 Rue Monge, 5ème arrondissement, Paris
営業時間: 月-土 7:00-20:30、日 7:00-20:00
おすすめパン: Baguette Monge、Pain aux Céréales、Croissant Feuilleté
フランスパンの楽しみ方とマナー
――フランスでパンを買う時のマナーや楽しみ方で、日本人が知っておくべきことは?
フランスでパンを楽しむ時のマナーは、それほど堅苦しくないんだけど、いくつか知っておくと良いポイントがあるよ。
まず挨拶が重要で、店に入る時は必ず「Bonjour」、出る時は「Au revoir, bonne journée」と言うのがマナーなんだ。これは単なる礼儀ではなく、フランス社会における「politesse」(礼儀正しさ)の基本なんだよ。
パンを選ぶ時は、直接手で触らずに「Puis-je avoir…?」(〜をいただけますか?)と言って店員さんに取ってもらうのが基本だね。衛生面もあるけど、プロの選択を信頼するという意味もあるんだ。
バゲットを持ち帰る時は、紙袋に入れてもらうけど、歩きながら端っこを少しちぎって食べるのは全く問題ないよ。これは「tradition française」で、焼きたてのバゲットの味を確かめる意味もあるんだ。
支払いは現金が好まれることが多いけど、最近はカードも普通に使えるよ。ただし、小額の場合は現金の方がスムーズだね。
――パンの保存方法や食べ頃、合わせる食べ物のコツは?
フランスパンの保存と食べ方にはいくつかのコツがあるよ。
まず保存方法だけど、バゲットは「jamais au réfrigérateur」(絶対に冷蔵庫に入れない)が鉄則なんだ。冷蔵庫に入れると澱粉が変質して美味しくなくなるからね。室温で紙袋に入れて保存するのがベストで、翌日までなら美味しく食べられるよ。
食べ頃は、焼きたてから2-3時間後が最高なんだ。この時間に外皮がパリッとして、中身の水分が安定するんだよ。朝に買ったバゲットは、昼食や夕食時に最高の状態になるように計算されているんだ。
合わせる食べ物だけど、朝食には「beurre et confiture」(バターとジャム)、昼食には「fromage」(チーズ)、夕食には「plat principal」(メイン料理)との組み合わせが基本だね。
古くなったパンは「pain perdu」(フレンチトースト)や「chapelure」(パン粉)として活用するのがフランス流。決して無駄にしないのが「esprit français」(フランス精神)なんだよ。
パン体験をより深めるためのアドバイス
――観光客がフランスでパンを楽しむ時に、より本格的な体験をするためのコツは?
本格的なフランスパン体験をしたいなら、いくつかのコツがあるよ。
まず、観光地のど真ん中ではなく、住宅街の「boulangerie de quartier」(地区のパン屋)を見つけることが大切だね。現地の人に「Où achetez-vous votre pain?」(どこでパンを買いますか?)と聞いてみるのが一番確実だよ。
時間帯も重要で、「première fournée」(一番焼き)の時間(朝7-8時、昼12-13時、夕方17-18時)に行くと、焼きたてのパンが楽しめるんだ。特に日曜日の朝は、家族でクロワッサンを買いに行くフランス人の日常を体験できるよ。
パンの種類についても、「pain quotidien」(日常のパン)だけでなく、「pain du dimanche」(日曜日のパン)や「pain de fête」(お祭りのパン)も試してみるといいね。季節限定のパンや地方のパンもあるから、店員さんに相談してみよう。
「dégustation」(試食)をお願いするのも良い経験だよ。フランスのブーランジェは自分のパンに誇りを持っているから、興味を示せば喜んで説明してくれるんだ。
――初心者におすすめのパンや味わい方の順番は?
初心者の方には、シンプルなパンから始めて、徐々に複雑なものに移るのがおすすめだね。
最初は「baguette tradition」から始めるといいよ。これはフランスパンの基本中の基本で、小麦、水、塩、酵母だけで作られたシンプルなパンなんだ。そのまま食べて、小麦の香りと酵母の風味を感じてみて。
次に、「croissant」や「pain au chocolat」といった「viennoiseries」(ウィーン菓子パン)に挑戦してみよう。バターの風味とパイ生地の食感が楽しめるよ。
慣れてきたら、「pain de campagne」や「pain aux céréales」など、より個性的なパンにトライしてみるといいね。これらは複雑な味わいがあるけど、フランスパンの多様性を感じられるよ。
最後は地方のパンや「pain spéciaux」(特別なパン)に挑戦してみよう。「pain aux noix」(くるみパン)や「pain aux olives」(オリーブパン)など、フランス各地の特色が楽しめるんだ。
大切なのは、急がずに一つ一つのパンの特徴を理解しながら楽しむことだね。フランスには本当に多様なパンがあるから、きっと自分好みのパンが見つかるはずだよ。
まとめ
フランスのパン文化は、単なる食べ物を超えた深い文化的・社会的意味を持っています。何世紀にもわたって受け継がれてきた伝統的な製法と、常に進化し続ける「art boulanger」(パン職人の技術)こそが、フランスパンの真の魅力なのです。
今回紹介した5つのパン屋さんは、それぞれ異なる角度からフランスパン文化を体験できる場所です。伝統的なブーランジェリーから革新的なアルチザンベーカリーまで、現地人だからこそ知る本物の体験を楽しんでください。
重要なのは、パンを通じて地元の人々と交流し、その土地の文化に触れることです。言葉の壁があっても、「C’est délicieux!」(美味しいです!)の一言で始まる会話は、きっと忘れられない旅の思い出となるでしょう。
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