【フランスの文化を学ぶ!】フランスの食文化の日本との違い5選 ~留学、長期滞在、移住、短期滞在・旅行の参考に~

グローバル化が進む現代社会では、異なる食文化を理解することも大切なコミュニケーションの一つになっています。「食」は文化の重要な一部であり、その国の歴史や価値観を映し出す鏡でもあります。日本人にとって当たり前の食習慣が、フランスではまったく異なることも少なくありません。
本記事では、日本在住のフランス人にインタビューを行い、フランスの食文化と日本の食文化の違いについて詳しく聞いてみました。留学や長期滞在、移住を考えている方はもちろん、旅行者の方にも参考になる情報をお届けします。
フランスってどんな国? 日本からのイメージ
パリ、エッフェル塔、ワイン、チーズ、バゲット、ファッション…皆さんはフランスの食文化と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
フランスは西ヨーロッパに位置し、地中海、大西洋、英仏海峡に面した多様な地理を持つ国です。この地理的多様性は食文化にも反映されており、北部のバターを使った料理から南部のオリーブオイルを使った地中海料理まで、地域ごとに異なる食文化が発展しています。
2010年にはユネスコ無形文化遺産に「フランスの美食術(ガストロノミー)」が登録されました。これは単に「美味しい料理」というだけでなく、質の良い食材を選び、それを活かす調理法、食事の場での会話や社交性を含めた「食事の文化的側面」が評価されたものです。
フランスでは食事は単なる栄養摂取ではなく、人生の喜びの重要な部分と考えられています。家族や友人と一緒に食卓を囲み、会話を楽しみながら食事をすることが、日常生活の中心となっている国なのです。
フランスで暮らす/フランスに行くメリットについて
メリット1:食の質と多様性
フランスでは新鮮で季節に合った食材が重視されます。週に数回開かれるマルシェ(市場)では、地元の生産者から直接購入できる新鮮な食材が並びます。また、パン屋(ブーランジェリー)、肉屋(ブーシェリー)、チーズ屋(フロマジェリー)など専門店も多く、それぞれのプロフェッショナルが質の高い食材を提供しています。日本のように「便利さ」よりも「品質」が重視される傾向があり、本物の味を楽しめる環境が整っています。
メリット2:食事の時間を大切にする文化
フランスでは食事の時間が非常に重視され、特にランチタイムは最低でも1時間、週末の家族や友人との食事は数時間かけてゆっくり楽しむのが一般的です。「食事の時間を楽しむ」という価値観は、忙しい現代社会においても大切にされています。特に「déjeuner(昼食)」は一日の中でも重要な時間とされ、多くの会社では従業員が十分な昼休みを取ることが奨励されています。
メリット3:ワインと料理のマリアージュ
フランスはワインの国として知られており、料理とワインの相性(マリアージュ)を楽しむ文化があります。高級レストランだけでなく、一般家庭でも日常的に料理に合わせたワインを選び、食事の喜びを高めています。ワインは「アルコール飲料」というより「食事の一部」と考えられており、適量を楽しむ文化が根付いています。初心者でも気軽に楽しめるよう、ソムリエのアドバイスを受けられるレストランも多く、ワイン文化を学ぶ絶好の環境です。
メリット4:食育と子供の食文化
フランスでは幼い頃から様々な味や食材に親しむ「食育」が重視されています。学校給食でも3〜4品のコースが提供され、子供たちに多様な食体験を提供しています。また、家庭でも子供たちは大人と同じ食事を(量を調整して)食べることが多く、「子供向けメニュー」という概念はあまりありません。このような環境で育つと、自然と食べ物への関心や味覚が養われていきます。
① フランスの食文化の日本との違い(食事)
―フランスの食事で、日本と一番違うなって思うのはどんなところ?
食事の「構成と順序」が大きく異なりますね。日本の食事は「一汁三菜」というように、ご飯、汁物、おかずが同時に並び、全体のバランスを重視します。一方フランスでは「コース料理」が基本で、前菜(エントレ)、メインディッシュ(プラ)、チーズ、デザートという順番で一品ずつ食べていきます。それぞれの料理を別々の皿で提供し、一つの料理を十分に味わってから次に進むという考え方です。この違いは食事の「流れ」に対する文化的な捉え方の違いを反映しています。
「パンの位置づけ」も大きな違いです。フランスではほぼすべての食事にパン(特にバゲット)が欠かせません。主食としての役割だけでなく、ソースをすくったり、料理を口に運ぶ助けとしても使われます。また、パンはテーブルクロスの上に直接置くのが一般的で、パン皿を使うのは比較的フォーマルな場面だけです。それから、パンは手でちぎって食べるのがマナーで、ナイフで切ることはしません。新鮮なバゲットを毎日買いに行くのは、多くのフランス人の日課でもあります。
「食事の時間帯」も日本と大きく異なります。フランスでは朝食は比較的軽め(パンとコーヒーなど)ですが、昼食(12〜14時)と夕食(19〜21時)はしっかり時間をかけます。特に夕食の時間が日本より遅く、20時頃から始める家庭も珍しくありません。レストランも日本より営業時間が遅く、ランチは12時から、ディナーは19時頃からというところが多いです。これは「食事を楽しむためにはある程度の時間が必要」という考え方に基づいています。
「食事中の会話の重要性」も特徴的です。フランスでは食事は単に「食べる」行為ではなく、家族や友人との交流の場と考えられています。そのため、テレビを見ながら食べるといったことはあまり一般的ではなく、テーブルを囲んで会話を楽しむことが重視されます。食事の時間は家族の絆を深めたり、友人との関係を育んだりする大切な機会なのです。会話の内容も食べ物の味や品質について話すことが多く、食への関心の高さが伺えます。
「ミネラルウォーターの文化」も日本と異なります。フランスのレストランでは水を注文すると、基本的にはミネラルウォーターのボトルが出てきて別料金がかかります。水道水を希望する場合は「une carafe d’eau(水差しの水)」と明確に伝える必要があります。家庭でも水道水よりもミネラルウォーターを好む人が多く、地域によって好まれるブランドが異なるほどです。「Evian(エビアン)」「Vittel(ヴィッテル)」「Volvic(ボルヴィック)」など複数のブランドがあり、それぞれ味やミネラルバランスが異なります。
―外食の時のマナーとか、日本と違うものってある?
「チップの習慣」は大きな違いですね。フランスではレストランでのサービス料が請求書に含まれていることが多いですが、特に良いサービスを受けた場合は追加でチップを渡すこともあります。高級レストランでは5〜10%程度、カフェではコーヒーの端数を切り上げる程度が一般的です。ただし、日本のように「チップは不要」ということではなく、「状況に応じて」という柔軟な対応が求められます。
「予約とキャンセル」に関する意識も異なります。フランスの人気レストランは予約が必須で、特に良いレストランは数週間から数ヶ月前から埋まってしまうことも珍しくありません。また、予約をキャンセルする際は必ず連絡することが期待されており、無断キャンセルは非常に失礼とされます。一部のレストランではキャンセル料を請求されることもあるので注意が必要です。
「食事のペース」も日本と違います。フランスのレストランでは料理の間に時間を空け、ゆっくりと食事を楽しむことが期待されています。そのため、次の料理の提供までに間があいても、催促することはマナー違反とされることがあります。特に夕食は2〜3時間かけて楽しむものという認識があり、お店側もそのペースで料理を提供します。「早く食べて席を空ける」というような考え方はフランスには基本的にありません。
「パンの扱い方」にも独特のマナーがあります。パンは直接お皿に置かず、テーブルクロスの上か、提供されるパン皿に置きます。食べるときは手でちぎって一口サイズにし、フォークの上の食べ物を押さえたり、ソースをすくったりする「補助ツール」として使うこともあります。決してパンをバターでパンを丸ごと塗るのではなく、一口サイズにちぎってから塗るのがマナーです。
「ナイフとフォークの使い方」も重要です。フランスでは基本的に食事中ずっとナイフを右手、フォークを左手に持ち続けます。日本や米国のように、切るときだけナイフを使い、食べるときにフォークを右手に持ち替えるという習慣はありません。また、食事の途中で席を離れる場合は、ナイフとフォークをお皿の上で「八の字」にクロスさせて置きます。これは「まだ食事中」というサインで、食事が終わったら、ナイフとフォークを平行に並べて置きます。
② フランスの食文化の日本との違い(会話)
―フランスでは、食事のときに何について話すことが多いの?
「料理そのもの」についての会話が非常に多いです。目の前にある料理の味や香り、食材の質、調理法などについて詳しく話し合うことがよくあります。「Ce plat est délicieux, comment est-il préparé?(この料理は美味しいですね、どうやって作られているのでしょう?)」というような質問から始まり、レシピの交換や改善点の議論に発展することも。フランス人にとって食べ物について話すことは単なる雑談ではなく、知識や経験を共有する重要な文化的行為なのです。
「ワインとのマリアージュ(相性)」も定番の話題です。選んだワインが料理とどう合うか、どのような香りや味わいがあるかなどを話し合います。ワインは単なる飲み物ではなく、食事体験を高める重要な要素と考えられており、その選択と評価は真剣な会話のテーマになります。ワインについての知識が文化的教養の一部とみなされているため、初心者でも恥ずかしがらずに質問したり意見を述べたりする雰囲気があります。
「食材の産地や季節」に関する話題も人気です。「Ces asperges viennent de la région?(このアスパラガスは地元産ですか?)」「C’est la saison des cerises maintenant!(今はさくらんぼの季節ですね!)」といった会話がよく交わされます。フランスでは食材の「terroir(テロワール、土地の特性)」を重視する文化があり、どこでどのように生産されたかという点に関心が高いのです。また、旬の食材を楽しむことも大切にされており、季節の移り変わりを食卓で感じる喜びを共有することが多いです。
「食にまつわる思い出や経験」も共有されます。「Ce goût me rappelle les tartes que faisait ma grand-mère(この味は祖母が作っていたタルトを思い出させる)」といったように、食べ物と個人的な記憶を結びつける会話もよく聞かれます。また、訪れたレストランの思い出や、旅先で発見した料理の話なども人気の話題です。食事は文化的アイデンティティと密接に結びついているため、こうした会話を通じて互いの価値観や背景を知る機会にもなっています。
「食と健康のバランス」についても話されます。フランスでは「bien manger(良く食べること)」が健康な生活の基本と考えられており、ダイエットや栄養摂取についても話題になります。ただし、日本や米国で見られるような厳格なカロリー計算やトレンドダイエットへの関心は比較的低く、むしろ「質の良い食材をバランス良く、適量食べる」という伝統的な食の知恵が重視されます。「Un peu de tout, mais avec modération(何でも少しずつ、でも適度に)」という考え方が基本です。
―食事中に話さない方がいい話題とかってある?
「過度に政治的・論争的な話題」は慎重に扱われます。フランス人は議論好きで社会問題について話し合うことも多いですが、特にフォーマルな場や初対面の人との食事では、強い意見の対立を引き起こす可能性のある話題(特定の政治家への批判や移民問題など)は避けられる傾向があります。楽しい食事の雰囲気を壊さないよう配慮されるのです。もちろん親しい間柄では活発な議論が交わされることもありますが、お互いの立場を尊重する姿勢が大切です。
「詳細な健康問題や病気の話」も食事中には適さないとされています。特に消化器系の問題や手術の詳細など、食欲を減退させるような生々しい健康の話は避けるのがマナーです。フランスでは食事の時間は楽しみと喜びの時間とされており、不快な話題はできるだけ控えるという暗黙の了解があります。一般的な健康やウェルネスについての話は問題ありませんが、具体的な症状や治療法などは食後の話題として取っておくのが望ましいでしょう。
「仕事の細かな問題」も、特に家族や友人との食事では避けられることが多いです。フランスでは仕事とプライベートの境界をはっきりさせる傾向があり、食事の時間はオフタイムとみなされます。特に週末の家族の食事などでは、仕事のストレスや悩みについて長々と話すのは好まれません。もちろん、仕事での成功や面白いエピソードを共有することは歓迎されますが、詳細な業務の問題は適切な場で話し合うという区別が一般的です。
「過度な個人的質問」も控えるべきでしょう。フランス人は会話好きですが、特に初対面の人に対して「Combien gagnez-vous?(いくら稼いでいますか?)」や「Pourquoi n’êtes-vous pas marié(e)?(なぜ結婚していないのですか?)」などの直接的な質問は失礼とされます。プライバシーを尊重する文化もあり、相手が自発的に話さない限り、あまり深入りしないというのがマナーです。
「激しい批判や不満」も食事の席では控えめにするのが望ましいです。例えば、提供された料理に不満がある場合でも、大げさに批判するのではなく、丁寧に問題点を伝えるのがフランス流です。また、共通の知人の陰口を食事中に長々と話すのも好まれません。フランス人は率直な意見交換を重視しますが、それは建設的で礼儀正しい範囲内であるべきと考えられています。
③ フランスの食文化の日本との違い(記念日/祝日)
―フランスでは、クリスマスや新年はどんな料理を食べるの?
「Le Réveillon de Noël(クリスマス・イブの晩餐)」は最も重要な祝祭の食事の一つです。12月24日の夜に家族や親しい友人と集まり、豪華な食事を楽しみます。メニューは地方や家庭によって異なりますが、一般的には「foie gras(フォアグラ)」や「huîtres(牡蠣)」、「saumon fumé(スモークサーモン)」などの高級食材を使った前菜から始まります。メインディッシュには「dinde aux marrons(栗を詰めた七面鳥)」や「chapon(カポン、去勢鶏)」がよく登場します。デザートには「bûche de Noël(ユール・ログ)」と呼ばれる丸太の形をしたケーキが欠かせません。この特別な食事はしばしば数時間かけてゆっくりと楽しまれ、高品質のワインと共に供されます。
「Le Réveillon du Nouvel An(大晦日の晩餐)」も盛大に祝われます。クリスマスが家族中心であるのに対し、新年は友人と過ごすことも多いです。メニューはクリスマスと似ていますが、特に「champagne(シャンパン)」が重視され、真夜中の乾杯に欠かせません。また、「fruits de mer(シーフード)」特に「huîtres(牡蠣)」は新年を祝う定番食材です。南フランスでは「13 desserts(13のデザート)」という伝統もあり、イエス・キリストと12使徒を象徴する13種類の小さなデザート(ドライフルーツやナッツ、お菓子など)が供されます。
「La Galette des Rois(王様のケーキ)」は「Épiphanie(公現祭)」の1月6日前後に食べられる特別なお菓子です。アーモンドクリームを詰めたパイ生地のケーキの中に「fève(フェーヴ)」と呼ばれる小さな陶器の飾りが隠されており、それが当たった人は「王様または女王様」となり、付属の紙の王冠をかぶります。これは家族や友人、職場でも楽しまれる伝統で、1月中は多くのパン屋やパティスリーでこのケーキが販売されます。南フランスでは「galette」ではなく、ブリオッシュ生地に砂糖とドライフルーツをトッピングした「couronne(王冠の形)」が一般的です。
「Pâques(イースター)」には「agneau(子羊)」が伝統的に食べられます。「gigot d’agneau(子羊のもも肉)」のローストや「navarin d’agneau(子羊と春野菜のシチュー)」などが定番で、春野菜と一緒に楽しまれます。子羊はキリストを象徴する宗教的な意味を持っています。デザートには「œufs en chocolat(チョコレートの卵)」や「lapins en chocolat(チョコレートのうさぎ)」、「cloches en chocolat(チョコレートの鐘)」などのイースター・チョコレートが欠かせません。これらは子供たちへのプレゼントとなり、庭などに隠された卵を探す「chasse aux œufs(卵探し)」の習慣もあります。
―フランスでは、日本にはない休日はある? そのときに食べる特別な料理は?
「La Chandeleur(聖燭祭)」は2月2日に祝われる日で、この日には「crêpes(クレープ)」を作って食べる習慣があります。フライパンで片手にコインを持ちながらクレープをひっくり返すと、その年1年間お金に困らないという言い伝えがあります。また、最初に焼いたクレープを戸口や梁の上に置くと、一年間幸運が訪れるとも言われています。シンプルに砂糖を振ったり、レモン汁をかけたり、チョコレートやジャムを塗ったりして楽しみます。この習慣は本来キリスト教の儀式に起源がありますが、現在では宗教的な意味合いは薄れ、冬の楽しい食の行事として親しまれています。
「Le 14 juillet(革命記念日、7月14日)」はフランスの国民的祝日で、多くの街や村で「feux d’artifice(花火)」や「bal populaire(野外ダンスパーティー)」が開催されます。この日の食事に特定のメニューはありませんが、「pique-nique(ピクニック)」や「barbecue(バーベキュー)」などのアウトドア料理が人気です。友人や家族と集まって、「charcuterie(シャルキュトリー)」、「fromages(チーズ)」、「baguette(バゲット)」などを持ち寄り、赤白青(フランス国旗の色)をテーマにした「desserts tricolores(三色デザート)」を楽しむことも。夏祭りの雰囲気の中、地元の特産品や旬の食材を使った軽食がふるまわれることも多いです。
「Mardi Gras(謝肉祭)」は四旬節(キリスト教の断食期間)の前の火曜日で、フランス語では「太った火曜日」という意味です。この日は四旬節の厳しい食事制限が始まる前に、バターや卵、肉などをたっぷり使った料理を楽しむ日とされています。特に「beignets(ベニエ)」や「crêpes(クレープ)」、「gaufres(ワッフル)」などの揚げ菓子や甘い食べ物が人気です。地域によっては「carnaval(カーニバル)」が開催され、仮装や山車の行列、音楽イベントなどが行われる中、ストリートフードを楽しむ習慣もあります。
「La fête de la Saint-Jean(聖ヨハネ祭)」は6月24日頃の夏至の時期に祝われる伝統行事です。この日には「feu de la Saint-Jean(聖ヨハネの火)」と呼ばれる焚き火を囲んでのお祝いが各地で行われます。田舎では特に野外での食事会が開かれ、「grillades(グリル料理)」や「saucisses(ソーセージ)」、「pommes de terre en papillote(アルミホイルで焼いたじゃがいも)」などが焚き火で調理されます。また、ハーブ類(特にセントジョンズワート)を収穫して料理に使ったり、薬用としたりする伝統もあります。この祭りは太陽と夏の訪れを祝う古代からの祭りがキリスト教と融合したものです。
「La fête des Rois Mages(東方三博士の祝日)」は1月6日に祝われ、前述の「Galette des Rois(王様のケーキ)」を食べる日です。この日はクリスマスから数えて12日目にあたり、東方の三博士がイエス・キリストを訪ねてきたことを記念しています。地域によっては「Brioche des Rois(王様のブリオッシュ)」と呼ばれる、オレンジの花水で香り付けした輪の形のブリオッシュにキャンディフルーツをトッピングしたものを食べる習慣もあります。家族や同僚と集まってケーキを切り分け、誰が「fève(フェーヴ)」を引き当てるかで盛り上がるのが一般的です。
④ フランスの食文化の日本との違い(おふくろの味)
―フランスで、お袋の味と言えば?
「Pot-au-feu(ポトフー)」は多くのフランス人にとって「comfort food(心の安らぐ食事)」の代表格です。牛肉と様々な野菜(にんじん、玉ねぎ、ポロねぎ、セロリ、カブなど)をじっくり煮込んだこの料理は、特に冬に家族の食卓に登場します。シンプルながらも素材の味が凝縮された料理で、肉の旨味が野菜に染み込み、栄養満点のスープも一緒に楽しめます。粗塩と粒マスタードを添えて食べるのが一般的です。各家庭によって使う肉の部位や野菜の種類、香草の配合が異なり、それぞれの「maman(ママ)」のレシピが受け継がれています。
「Blanquette de veau(ブランケット・ド・ヴォー)」も典型的な家庭料理です。仔牛肉を玉ねぎやにんじんなどの野菜と一緒に白ワインで煮込み、生クリームとレモン汁で仕上げたクリーム煮は、フランス全土で愛されている定番メニューです。辛すぎず複雑な香辛料も使わないこの料理は、子供から大人まで喜ばれる「母の味」として知られています。「ママのブランケット」という表現は、多くのフランス人にとって幼少期の温かい食卓の思い出と結びついています。日曜日の家族の食事として供されることが多く、残ったソースはバゲットですくって食べるという楽しみ方もあります。
「Quiche Lorraine(キッシュ・ロレーヌ)」はフランス東部ロレーヌ地方発祥の料理ですが、今では全国的な家庭料理として定着しています。パイ生地に卵と生クリームで作ったカスタードにベーコンを加えて焼き上げるシンプルな料理で、手軽に作れる上に栄養満点です。オリジナルのキッシュ・ロレーヌにはチーズが入っていませんが、現代では多くの家庭がグリュイエールチーズなどを加えています。また、基本のレシピにほうれん草やキノコ、サーモンなどを加えて味のバリエーションを楽しむこともあります。子供のおやつや軽い夕食、ピクニックの持ち物としても重宝される多用途な料理です。
「Gratin dauphinois(グラタン・ドフィノワ)」は特にフランス南東部で愛される家庭料理です。薄くスライスしたジャガイモを牛乳(または生クリーム)に浸してオーブンで焼き上げるシンプルな料理ですが、食材の質と調理の丁寧さが味の決め手となります。家庭によってはニンニクで香り付けしたり、表面にチーズをのせたりするバリエーションもありますが、本来はシンプルなレシピが特徴です。大皿での提供が一般的で、家族で分け合って食べる料理として親しまれています。特に肉料理の付け合わせとして登場することが多く、日曜日のローストチキンと一緒に出されることも多いです。
「Ratatouille(ラタトゥイユ)」は南フランス、特にプロヴァンス地方の代表的な家庭料理です。ナス、ズッキーニ、パプリカ、トマト、玉ねぎなどの夏野菜をオリーブオイルでじっくり煮込んだ料理で、ハーブ(タイム、ローリエ、バジルなど)で香り付けします。各家庭で野菜の切り方や煮込み方、ハーブの配合が異なり、「Grand-mère(おばあちゃん)」から受け継いだレシピは特に大切にされています。冷たくても温かくても美味しく、翌日になるとさらに味が馴染んで美味しくなるとも言われています。夏の豊かな収穫を象徴する料理で、持続可能で健康的な地中海式食事の代表例でもあります。
地方ごとの「お袋の味」も非常に重要です。例えば、アルザス地方の「Choucroute(シュークルート)」、ブルターニュ地方の「Kig ha farz(キグ・ア・ファルズ)」、バスク地方の「Piperade(ピペラード)」など、地域によって特色ある家庭料理があります。フランスでは地方のアイデンティティと食文化が強く結びついており、「お袋の味」はしばしば「地方の味」でもあるのです。フランス人は自分の出身地の料理に特別な愛着を持ち、どこに住んでいても故郷の家庭料理を作り続けることで、家族の伝統と地域の文化を大切にしています。
―フランスで大人も子供も好きな定番の家庭料理って何?
「Hachis Parmentier(アシ・パルマンティエ)」は世代を超えて愛される定番料理です。ひき肉の煮込みの上にマッシュポテトをのせてオーブンで焼いた料理で、イギリスの「シェパーズパイ」に似ています。手頃な材料で作れて栄養バランスも良く、寒い日に体が温まる料理として親しまれています。残り物の肉を活用できるという実用的な面もあり、フランスの家庭の知恵が詰まった料理です。表面に焼き色がついたカリカリのマッシュポテトと、下の層のジューシーな肉の組み合わせが絶妙で、子供から大人まで好きな人が多いです。
「Croque-monsieur(クロック・ムッシュ)」もフランスの国民食と言える存在です。ハムとチーズ(通常はグリュイエール)をはさんだホットサンドイッチで、ベシャメルソースを上からかけてオーブンで焼き上げます。カフェやビストロの定番メニューでもありますが、家庭でも手軽に作れる人気料理です。上に目玉焼きをのせると「Croque-madame(クロック・マダム)」になります。子供のおやつや軽い夕食、急な来客時のもてなし料理としても重宝される万能メニューです。バゲットではなく食パンを使うのが一般的で、外はカリカリ、中はとろけるチーズの食感が特徴です。
「Poulet rôti(ローストチキン)」は特に日曜日の昼食に登場することが多い定番料理です。丸鶏をハーブ(タイム、ローズマリーなど)で香り付けしてオーブンでじっくり焼き、付け合わせに「pommes de terre(ジャガイモ)」を一緒に焼くことが多いです。シンプルながらも技術が必要な料理で、皮はパリパリ、中はジューシーに仕上げるコツは各家庭で受け継がれています。また、焼いたチキンからとれる肉汁を使ったグレービーソースも重要な要素です。残ったチキンは翌日のサンドイッチやサラダの具材として活用される、無駄のない料理でもあります。
「Pâtes à la carbonara(カルボナーラ・パスタ)」はイタリア料理ですが、フランスの家庭でも頻繁に作られる人気メニューです。ただし、フランス版はしばしば生クリームを加えるなど、オリジナルとは少し異なるアレンジが施されています。子供に人気があり、準備も簡単なので平日の夕食としても重宝されています。ベーコンの代わりに「lardons(ラルドン)」と呼ばれる角切りの塩漬け豚肉を使うのがフランス流で、これが独特の香ばしさと塩味を加えています。フランスでは「cuisine familiale(家族料理)」として定着しており、多くの子供たちにとって思い出の味となっています。
「Soupe de légumes(野菜スープ)」も欠かせない存在です。特に冬場は、旬の野菜をたっぷり使ったスープが食卓に並びます。「Soupe à l’oignon(オニオンスープ)」、「Soupe au pistou(ピストゥースープ、バジルペーストを加えた夏野菜のスープ)」、「Potage Parmentier(ポタージュ・パルマンティエ、ジャガイモのポタージュ)」など、地域や季節によって様々なバリエーションがあります。これらのスープは栄養価が高く、バゲットをつけて食べることも多いです。多くのフランス人にとって、母親が作る野菜スープは風邪をひいた時や疲れた時に食べる「癒しの料理」であり、食卓に欠かせない存在なのです。
⑤ 知っておきたいフランスの文化(その他)
―フランスの食事で、日本人が知っておいた方がいい豆知識ってある?
「チーズの食べ方」には特定のルールがあります。「plateau de fromages(チーズの盛り合わせ)」は通常メインディッシュの後、デザートの前に出されます。チーズは時計回りに、一番マイルドなものから一番強いものへと順番に食べるのが基本です。また、硬いチーズは切り分けるとき、「pointe(先端部分)」を取るのではなく、チーズ全体のスライスを切り取ります。これは「チーズの花」と呼ばれる中心部分を皆で平等に楽しむためです。また、チーズは常温で食べるのがベストなので、食べる30分ほど前に冷蔵庫から出しておくのが一般的です。
「ワインを注ぐ量」にも注意が必要です。フランスでは日本のように「グラスいっぱい」にワインを注ぐことはほとんどありません。グラスの3分の1から半分程度が適量とされています。これはワインの香りを楽しむためのスペースを確保するためですが、同時に「おかわりの機会を作る」という社交的な意味合いもあります。また、赤ワインのボトルを開けたら少し「呼吸」させる(空気に触れさせる)時間を置くのも一般的です。これはワインの香りと味わいを豊かにするためです。
「メニューの読み方」も役立つ知識です。フランス料理のメニューでは、料理名の後に「façon grand-mère(おばあちゃん風)」や「à la provençale(プロヴァンス風)」というような表現がよく使われます。これらは調理法や味付けのスタイルを示しています。例えば「à la provençale」はトマト、ニンニク、オリーブ油、ハーブを使った南仏風の調理法を意味します。また、「entrée(アントレ)」は日本語の「アントレ」とは異なり、前菜を指すので注意が必要です。メインディッシュは「plat principal(プラ・プリンシパル)」と表記されます。
「水への姿勢」も日本と大きく異なります。レストランでは水を注文すると、多くの場合「plate ou gazeuse?(ミネラルウォーターか炭酸水か?)」と聞かれます。無料の水道水が欲しい場合は「une carafe d’eau(水差しの水)」と明確に伝える必要があります。また、フランスでは食事中にたくさんの水を飲む習慣があまりなく、ワインを中心に飲むことが多いです。水は「soif(喉の渇き)」を癒すためというよりも、口の中をリセットするために少量ずつ飲まれることが多いです。
「パン」に関する習慣も特徴的です。フランスではパン、特に「baguette(バゲット)」は食事に欠かせない要素ですが、バターを塗って食べることはそれほど一般的ではありません。パンは主にソースをすくったり、チーズと一緒に食べたり、そのまま味わったりします。また、パンは食事の最初から最後まで食卓に置かれ、いつでも自由に食べることができます。特に南フランスでは、ニンニクとオリーブオイルを塗って軽く焼いた「Pain à l’ail(ガーリックブレッド)」が前菜として提供されることもあります。
―フランス人が好きな日本食って何? そのイメージは?
「寿司」はフランスでも大人気で、特に都市部では日本食レストランが急増しています。ただし、フランス人の好みは日本の伝統的な寿司とは少し異なります。「saumon(サーモン)」や「avocat(アボカド)」を使った巻き寿司が特に人気で、マヨネーズベースのソースやスパイシーな味付けを好む傾向があります。多くのフランス人にとって寿司は「cuisine raffinée(洗練された料理)」であると同時に「cuisine saine(健康的な料理)」というイメージがあります。また、「manger avec des baguettes(箸で食べること)」自体がエキゾチックな体験として楽しまれています。
「ラーメン」も近年人気が急上昇中です。フランスでは特に「ramen tonkotsu(豚骨ラーメン)」が好まれる傾向があり、こってりとした濃厚なスープが味の好みに合うようです。パリを中心に専門店が増えており、週末には行列ができる店も少なくありません。フランス人にとってラーメンは「fast food japonais(日本のファストフード)」というイメージがありますが、それは否定的な意味ではなく、「手軽に食べられる本格的な料理」として捉えられています。特に若い世代を中心に「culture ramen(ラーメン文化)」への関心が高まっており、調理法や地域による違いなどにも注目が集まっています。
「抹茶」製品も大ブームとなっています。特に「パティスリー(洋菓子店)」では「macaron au thé matcha(抹茶マカロン)」や「gâteau au thé matcha(抹茶ケーキ)」などが人気メニューとなっています。フランス人にとって抹茶は「exotique(エキゾチック)」で「zen(禅)」なイメージと結びついており、その鮮やかな緑色と独特の風味が注目を集めています。ただし、日本の抹茶に比べるとかなり甘く調整されていることが多く、本来の苦みは抑えられている傾向があります。「thé matcha(抹茶)」は単なる飲み物ではなく、日本文化の象徴として捉えられており、「bien-être(ウェルビーイング)」や「méditation(瞑想)」といったライフスタイルとも関連付けられています。
「天ぷら」もフランス人に評価されている日本料理です。フランスには「friture(揚げ物)」の伝統がありますが、日本の天ぷらの「légèreté(軽さ)」と「croustillant(サクサク感)」は特別なものとして捉えられています。特に「tempura de légumes(野菜の天ぷら)」は「cuisine délicate(繊細な料理)」として高く評価されており、フランス料理のテクニックと比較されることもあります。料理人の間では天ぷらの衣の作り方や油の温度管理などの技術面に関心が高まっており、高級フレンチレストランのメニューに「inspiré de la tempura japonaise(日本の天ぷらにインスパイアされた)」料理が登場することもあります。
「和牛」も高級食材として注目されています。フランスには「bœuf de qualité(質の高い牛肉)」を評価する文化がありますが、和牛の「persillé(霜降り)」と「fondant en bouche(口の中でとろける食感)」は特別なものとして認識されています。パリの高級レストランでは「wagyu japonais(日本の和牛)」をメニューに取り入れるところも増えてきました。ただし、本物の日本産和牛は非常に高価なため、多くの場合は「inspired by wagyu(和牛にインスパイアされた)」や「style wagyu(和牛スタイル)」として、和牛に似た特徴を持つ牛肉が提供されることも多いです。
まとめ
フランスの食文化を知ることで、「食べることへの情熱」と「食事を楽しむことの大切さ」という価値観に触れることができます。日本の食文化も素晴らしいものですが、フランスには「食事の時間」そのものを大切にし、会話や人間関係を深める場としての食卓を重視する文化があります。
特に印象的なのは、料理の「効率性」よりも「質と楽しさ」を優先する考え方です。食事に2〜3時間かけることも珍しくなく、それは「時間の無駄」ではなく「生活の質を高める」重要な要素と捉えられています。また、食材の産地や季節を大切にし、「テロワール(その土地らしさ)」を尊重する姿勢も、現代の均質化された食文化の中で見直されるべき価値観かもしれません。
フランスへの留学や旅行の際には、単においしいものを食べるだけでなく、その「食べ方」や「食事の楽しみ方」にも注目してみてください。地元のマルシェで生産者と会話しながら食材を選び、カフェのテラスでゆっくりコーヒーを味わい、友人との長い食事の時間を通じて深い会話を楽しむ…。そうした経験は、帰国後の私たちの食生活や人間関係にも新しい視点をもたらしてくれるでしょう。
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