【イギリスの文化を学ぶ!】イギリスの食文化の日本との違い5選 ~留学、長期滞在、移住、短期滞在・旅行の参考に~

グローバル化が進む現代社会では、異なる食文化を理解することも大切なコミュニケーションの一つになっています。「食」は文化の重要な一部であり、その国の歴史や価値観を映し出す鏡でもあります。日本人にとって当たり前の食習慣が、イギリスではまったく異なることも少なくありません。
本記事では、日本在住のイギリス人にインタビューを行い、イギリスの食文化と日本の食文化の違いについて詳しく聞いてみました。留学や長期滞在、移住を考えている方はもちろん、旅行者の方にも参考になる情報をお届けします。
イギリスってどんな国? 日本からのイメージ
ロイヤルファミリー、紅茶、フィッシュ&チップス、パブ文化…皆さんはイギリスの食文化と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
イギリス(正式名称:グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国から構成される島国です。「イギリス料理はまずい」という古いステレオタイプがありますが、実際は地元の素材を活かした伝統料理から、世界各国の影響を受けた多様な料理まで、豊かな食文化が広がっています。
特に近年は「ガストロパブ」と呼ばれる質の高い料理を提供するパブや、地産地消を重視したファーマーズマーケットの普及など、イギリスの食のシーンは大きく変化しています。また、インド料理やイタリア料理など、多文化共生の歴史を反映した多様な国際料理も日常的に親しまれています。
イギリスで暮らす/イギリスに行くメリットについて
メリット1:多彩な食文化の交差点
イギリスは長い移民の歴史から、世界中の料理が本場の味を保ちながら独自の進化を遂げています。特にインド料理はイギリスの国民食とも言われるほど浸透しており、本場インドとは異なるイギリス独自のカレー文化が発展しています。また、中東料理、カリブ料理、中国料理など、世界各国の本格的な味が街中で楽しめるのが魅力です。
メリット2:地産地消と食材の質への意識
近年のイギリスでは、地元産の食材を使った料理や、オーガニック食品への関心が高まっています。全国各地でファーマーズマーケットが開催され、地元の生産者から直接購入できる機会が増えています。また、「フードマイル」(食材の輸送距離)を減らすことで環境に配慮する意識も高まっており、エシカル(倫理的)な食の選択肢が広がっています。
メリット3:パブカルチャーと社交の場としての食事
イギリスのパブは単なる飲食店ではなく、コミュニティの中心となる社交の場です。日曜日には「サンデーローストディナー」という伝統的な料理を家族や友人と楽しんだり、週末にはパブでスポーツ観戦をしながら食事を楽しんだりする文化があります。食事を通じた人々の交流が自然に生まれる環境が整っています。
メリット4:伝統と革新のバランス
伝統的なアフタヌーンティーや地方の郷土料理など、昔ながらの食文化が大切に守られている一方で、モダンブリティッシュと呼ばれる革新的な料理も発展しています。伝統を尊重しながらも新しい風を取り入れるバランス感覚があり、常に進化し続ける食文化を体験できるのが魅力です。
① イギリスの食文化の日本との違い(食事)
―イギリスの食事で、日本と一番違うなって思うのはどんなところ?
食事の「時間帯」がまず大きく違いますね。イギリスでは朝食は7時〜8時頃、ランチは12時〜13時頃ですが、夕食が特に早くて驚く人が多いです。多くの家庭では17時〜19時の間に夕食を食べるので、日本の感覚だとまだ早すぎると感じるかもしれません。レストランも早い時間帯がピークで、20時以降の予約はむしろ「遅い時間」として扱われることもあります。これは歴史的に労働者の生活リズムに合わせて発展した文化で、日照時間が短い冬の時期は特に早めの夕食が一般的です。
「お皿とカトラリーの使い方」も大きな違いです。日本では一人一人に個別の小皿で料理が提供されることが多いですが、イギリスでは大皿から各自が取り分けるスタイルが一般的です。特に家庭での食事では、テーブルの中央に置かれた大きな皿から自分の分を取るスタイルが普通です。また、ナイフとフォークの使い方も重視され、特にフォーマルな場では「コンチネンタルスタイル」(フォークを左手、ナイフを右手に持ち、フォークの背を上にして食べる方法)でいただくのがマナーとされています。
「食事のボリューム」も大きな違いです。イギリスの一人前は日本の感覚からするとかなり多めで、特に「フルイングリッシュブレックファスト」(ベーコン、ソーセージ、卵、豆、トマト、マッシュルームなどの盛り合わせ)や「サンデーローストディナー」(ローストした肉とたくさんの付け合わせ)などは、日本人の通常の2食分ほどのボリュームがあります。これは歴史的に肉体労働をする人が多かった時代の名残で、現代でもこの伝統は残っています。
「パブでの食事文化」も日本にはない独特のものです。多くのパブでは食事も提供されていて、カジュアルな雰囲気の中でビールや他のドリンクと一緒に、パイやフィッシュ&チップスなどの料理を楽しめます。「パブランチ」として友人と集まり、長時間おしゃべりをしながら食事をするのも一般的です。日本の居酒屋とは異なり、家族連れでも気軽に利用できる場所になっています。
「食事のペース」も異なります。日本では「ゆっくり食べる」ことが良しとされる傾向がありますが、イギリスでは比較的早いペースで食べることが多いです。特にランチタイムは短時間で済ませることも珍しくなく、職場では「デスクランチ」(机で働きながら食べること)も一般的です。その代わり、週末の「サンデーローストディナー」などは家族や友人とゆっくり時間をかけて楽しむ文化があります。
―外食の時のマナーとか、日本と違うものってある?
「チップの文化」が最も分かりやすい違いでしょうね。イギリスではレストランでの食事後、通常10〜15%程度のチップを支払うのが一般的です。高級レストランでは12.5%がサービス料として自動的に加算されることもありますが、それでも特に良いサービスだったらさらに追加することもあります。ただし、バーやパブでただドリンクを注文する場合や、カウンターで注文するカジュアルな店ではチップは必要ありません。店を出る時に小銭をテーブルに置いていくか、支払い時に「Keep the change(おつりは取っておいて)」と言うのが一般的な方法です。
「水へのこだわり」も違いますね。日本ではレストランで当たり前に無料の水が出されますが、イギリスでは注文しないと出してくれないことが多いです。その際も「Still or sparkling?(炭酸なしか入りか)」と聞かれ、どちらを選んでも有料のボトルウォーターが提供されることがあります。無料の水道水が欲しい場合は、はっきりと「Tap water, please(水道水をください)」と伝える必要があります。最近は持続可能性への意識から、無料の水道水を提供するレストランも増えていますが、まだ日本ほど一般的ではありません。
「予約の重要性」も違いますね。イギリスの人気レストランは数週間〜数ヶ月前から予約で埋まってしまうことも珍しくありません。特に週末や特別な日(バレンタインデーやクリスマスなど)は、かなり前から予約する必要があります。また、予約の時間にはきちんと到着することが期待されており、大幅な遅刻は失礼とされることもあります。予約なしで入れる店も増えていますが、その場合は列に並んで順番を待つ「キューイング」の文化が徹底されています。
「音へのマナー」も注目すべき点です。日本のレストランでは比較的静かに食事をすることが多いですが、イギリスでは、特にパブやカジュアルなレストランではにぎやかな会話や笑い声が飛び交うことが一般的です。むしろ、静かすぎる食事はあまり楽しんでいないと思われることもあるくらいです。ただし、高級レストランでは適度な会話音量が期待されるなど、場所によってマナーは異なります。
「食事の順番と構成」もイギリス独特です。フォーマルな食事では、スターター(前菜)、メインコース、デザートの3コース構成が一般的です。また、チーズボードが別のコースとして提供されることもあります。日本の「一汁三菜」のように同時に複数の料理を食べるスタイルではなく、一つのコースを食べ終わってから次のコースに進む流れが一般的です。
② イギリスの食文化の日本との違い(会話)
―イギリスでは、食事のときに何について話すことが多いの?
「天気」は間違いなく最も一般的な話題です!イギリス人にとって天気の話は単なる世間話ではなく、コミュニケーションの重要な部分なんです。「Lovely weather we’re having(いい天気ですね)」や「Bit chilly today, isn’t it?(今日は少し肌寒いですね)」といった天気に関する会話から食事が始まることが非常に多いです。変わりやすいイギリスの天気は話題に困ることがないので、初対面の人との会話の糸口としても最適なんです。
「食べ物自体」についての会話も盛んです。目の前の料理の感想や、最近行った美味しいレストラン、自分で試した料理レシピなどについて話すことが多いです。イギリスでは食への関心が近年高まっており、テレビの料理番組の影響もあって、料理について話すことは共通の趣味として認識されています。「This is delicious, have you tried making it at home?(これ美味しいね、家で作ったことある?)」といった会話がよく交わされます。
「週末の予定や活動」も定番の話題です。食事の席では「What are you up to this weekend?(週末は何をする予定?)」といった質問から会話が広がり、旅行計画、観劇、スポーツ観戦などの話題に発展することが多いです。イギリス人は休暇や余暇活動を非常に大切にする傾向があり、これらの話題は会話を盛り上げる素材として重宝されます。
「テレビ番組や映画」についての会話も人気です。特にイギリスではBBCのドラマシリーズや人気リアリティ番組について話すことが多いですね。「Did you watch…last night?(昨日の〇〇見た?)」という質問から、番組の内容や俳優について熱心に議論することも珍しくありません。イギリスは質の高いテレビドラマの産地として知られており、それについての会話は社交の重要な一部となっています。
「スポーツ」、特にサッカー(フットボール)に関する話題も外せません。プレミアリーグの試合結果や選手の移籍、好きなチームの話などは、特に男性同士の会話ではほぼ必ず出てくる話題です。クリケットやラグビー、テニス(ウィンブルドン期間中)なども季節によって話題になります。ただし、どのチームを応援しているかは時に熱くなりやすいトピックなので、初対面では相手の反応を見ながら話すことがコツです。
―食事中に話さない方がいい話題とかってある?
「お金」に関する直接的な話は避けられる傾向があります。特に「いくら稼いでいるか」「いくら持っているか」といった個人の収入や資産について聞くことはプライバシーの侵害と見なされることが多いです。また、食事の値段について詳しく議論したり、「これは高すぎる」と不満を言ったりすることも、特に誰かに招待されている場合は失礼にあたります。イギリスでは金銭に関する話題は比較的タブー視される傾向があり、特に食事の席では避けるのが無難です。
「政治や宗教」に関する深い議論も、特に互いをよく知らない相手との食事では避けられることが多いです。イギリスでは政治的意見が分かれやすいトピック(Brexit(ブレグジット)など)や、宗教的な信条については、親しくない間柄では軽く触れる程度にとどめることが多いです。もちろん、親しい友人同士なら熱く議論することもありますが、食事を楽しむ雰囲気を壊さないよう配慮するのが一般的です。
「健康問題や病気」の詳細も、食事中には避けられがちです。特に症状や治療の生々しい描写は、食欲を減退させる可能性があるため控えられます。ただし、一般的な健康や運動に関する話題は問題ないことが多いです。病気についての話をする場合も、「I’ve been a bit under the weather lately(最近ちょっと体調を崩していて)」といった婉曲的な表現が好まれます。
「ゴシップや悪口」も食事の席では避けるべき話題とされています。特に共通の知人についての否定的な噂話などは、イギリスの食事マナーとしてはあまり好ましくないとされることが多いです。「If you don’t have anything nice to say, don’t say anything at all(良いことが言えないなら、何も言わない方がいい)」という考え方が根付いています。
「過度に論争を呼ぶトピック」も注意が必要です。例えば動物の権利や環境問題など、強い意見の対立を生む可能性のある話題は、特にフォーマルな食事の席では避けられることが多いです。イギリスの食事の文化では、心地よい雰囲気を維持することが重視され、激しい議論になりそうな話題は控えめに扱われる傾向があります。
③ イギリスの食文化の日本との違い(記念日/祝日)
―イギリスでは、クリスマスや新年はどんな料理を食べるの?
「クリスマスディナー」はイギリスの年間で最も重要な食事イベントの一つです。伝統的には七面鳥のローストがメインディッシュで、付け合わせには「ローストポテト」(外はカリッと中はホクホクのじゃがいも)、「ブリュッセルスプラウト」(芽キャベツ)、「パースニップ」(西洋ニンジン)などの根菜類、「ステュッフィング」(パンと香草などを混ぜた詰め物)、そして「ピッグス・イン・ブランケッツ」(ベーコンで巻いたミニソーセージ)が添えられます。これらにはグレービーソース(肉汁ソース)とクランベリーソースをかけて食べます。デザートには伝統的に「クリスマスプディング」(ドライフルーツとスパイスがたっぷり入った蒸しプディング)や「ミンスパイ」(ドライフルーツとスパイスのフィリングを詰めた小さなパイ)が出されます。これらの料理は家族全員で準備することも多く、一日がかりの大イベントなんです。
「新年」は意外にも特別な伝統料理があまりありません。多くの人は大晦日に友人とパブやパーティーで過ごし、新年を迎えた後は元旦に「フルイングリッシュブレックファスト」を遅めに食べることが多いです。ただし、スコットランドでは新年(「ホグマネー」と呼ばれる)に「カルーキン」というスープや「ブラックバン」(黒いパン)を食べる習慣があります。また、一部の地域では「新年に豚肉を食べると幸運が訪れる」という言い伝えもあります。
「パンケーキデー」(四旬節の前の火曜日)には、薄いクレープのようなパンケーキを食べる伝統があります。これは宗教的に四旬節(イースターまでの断食期間)の前に卵や乳製品などを使い切るという由来がありますが、現在ではほとんどの家庭で楽しまれています。イギリスのパンケーキは日本やアメリカのふわふわしたものとは異なり、薄くて大きなクレープ状で、レモン汁と砂糖をかけるのが最も伝統的な食べ方です。多くの家庭では「パンケーキレース」といって、フライパンでパンケーキを投げ上げて裏返すゲームをして楽しんだりします。
「イースター」(春分後の最初の満月後の日曜日)には、特別な食事として「ローストラム」(子羊のロースト)を食べる伝統があります。子羊はキリストの象徴とされ、宗教的な意味合いもあります。付け合わせには春の野菜やミントソースが添えられることが多いです。また、「ホットクロスバン」(十字の模様が入った甘いパン)も伝統的なイースターの食べ物で、特に「グッドフライデー」(聖金曜日、イースターの前の金曜日)に食べる習慣があります。さらに、チョコレートのイースターエッグを子供たちにプレゼントする文化も広く定着しています。
―イギリスでは、日本にはない休日はある? そのときに食べる特別な料理は?
「ガイ・フォークス・ナイト」(11月5日)は、1605年の国会議事堂爆破計画の阻止を記念する日で、全国で花火や焚き火のイベントが開催されます。この日には屋外で「ジャケットポテト」(皮ごと焼いたじゃがいも)や「トフィーアップル」(りんごにキャラメルをコーティングしたお菓子)、「パーキン」(生姜の効いたオートミールケーキ)、「ボンファイヤーナイトスープ」(根菜たっぷりのスープ)などを食べながら花火を楽しむのが伝統です。子供から大人まで楽しめる行事で、寒い夜に温かい食べ物とホットドリンクを持って屋外で過ごすのが定番です。
「バーンズナイト」(1月25日)はスコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズを称える日で、この日には「ハギス」(羊の内臓とオーツ麦などを詰めた料理)と「ニップスアンドタティーズ」(カブとジャガイモのピューレ)を食べながら、バーンズの詩を朗読する伝統があります。スコットランドでは大切な文化的行事で、正装してウイスキーを飲みながら詩の朗読を楽しみます。ハギスは「アドレス・トゥ・ア・ハギス」という詩を朗読してから儀式的に切り分けられます。スコットランド以外でも、スコットランド系の人々が集まって祝うことが多いです。
「ハーベストフェスティバル」(9月または10月)は収穫を祝う伝統的な行事で、特に田舎の教会や学校で重要視されています。地元で収穫された野菜や果物、穀物などを使った料理を持ち寄り、コミュニティで分け合うことが多いです。「ハーベストスープ」(季節の野菜がたっぷり入ったスープ)や「アップルクランブル」(リンゴのデザート)、「プラムケーキ」などの季節の果物を使ったデザートが定番です。余った食料は地域の恵まれない人々に寄付されることも多く、感謝と分かち合いの精神を体現する行事です。
「サマーソルスティス」(夏至、6月21日頃)は特に「ストーンヘンジ」などの古代遺跡で祝われる古来の伝統です。現代では「ミッドサマーフェスティバル」として、屋外でのピクニックや「サマーパンチ」(フルーツとお酒を混ぜた飲み物)、「サマーベリーパイ」などの季節のフルーツを使ったデザートを楽しむことが多いです。特に田舎の地域ではコミュニティが集まって野外での食事会やダンスを楽しみます。太陽の光がもっとも長い日を祝う、前キリスト教時代から続く伝統です。
④ イギリスの食文化の日本との違い(おふくろの味)
―イギリスで、お袋の味と言えば?
「シェパーズパイ」(羊のひき肉と野菜の煮込みにマッシュポテトをのせて焼いたもの)と「コテージパイ」(シェパーズパイの牛肉バージョン)は、多くのイギリス人にとっての「お袋の味」です。家庭によって使うハーブやスパイス、野菜の種類が異なり、それぞれの「ママの味」があります。比較的安価な材料で作れることから、大家族でも作りやすく、冬の寒い日に体が温まる思い出の味として親しまれています。「子供の頃、学校から帰ると母が作ってくれていた」という記憶を持つ人も多いです。
「トゥード・イン・ザ・ホール」(ヨークシャープディングの生地の中にソーセージを入れて焼いたもの)も典型的な家庭料理です。シンプルな材料で作られるこの料理は、特に平日の夕食として人気があり、オニオングレービーを添えて食べるのが一般的です。家庭によってソーセージの種類や焼き方に違いがあり、母親から娘へと伝わるレシピも少なくありません。
「スティッキートフィープディング」や「ジャムロリーポリー」などの伝統的なデザートも「お袋の味」として親しまれています。これらの蒸しプディングは特に寒い冬の日に、温かいカスタードソースをかけて食べるのが定番で、学校給食でも提供されるなど、多くのイギリス人の幼少期の思い出に結びついています。
「ブレッドアンドバタープディング」も懐かしの味です。古くなったパンを無駄にしないという知恵から生まれたこのデザートは、パンにバターを塗り、卵とミルク、砂糖、シナモンなどを混ぜた液に浸して焼いたシンプルながらも心温まる料理です。家庭の余り物を活用した料理で、「もったいない」精神を体現しています。
地域によっても「お袋の味」は異なります。北部では「ホットポット」(ラム肉と野菜の煮込み)、コーンウォールでは「パスティ」(肉と野菜を包んだパイ)、スコットランドでは「カルドゥカノン」(キャベツとポテトのピューレ)が地元の家庭料理として受け継がれています。これらは元々労働者階級の料理として始まり、今でも「ソウルフード」として愛されています。
―イギリスで大人も子供も好きな定番の家庭料理って何?
「バンガーズ・アンド・マッシュ」(ソーセージとマッシュポテト)は世代を超えて愛される定番の家庭料理です。シンプルながらも満足感のある組み合わせで、オニオングレービーをかけて食べるのが一般的です。「バンガーズ」という名前は、第二次世界大戦中に水分の多いソーセージが調理中に破裂する音(bang)に由来するという説があります。家庭料理としてはもちろん、パブのメニューでも定番で、「クラシック」として愛され続けています。
「ローストディナー」、特に「サンデーローストディナー」は家族の集まる日曜日の伝統料理です。ローストビーフやローストチキン、ローストポークなどの肉料理を中心に、ローストポテト、ヨークシャープディング、各種野菜、グレービーソースを添えた豪華な食事です。日曜の昼過ぎに食べるこの料理は、家族の絆を深める重要な儀式でもあります。家で作るだけでなく、多くのパブやレストランでも提供されています。
「フィッシュ・アンド・チップス」もイギリスを代表する国民食です。白身魚(主にタラ)の衣揚げとフライドポテトの組み合わせで、ビネガー(酢)とソルト(塩)をかけるのが伝統的な食べ方です。元々は労働者階級の手頃な食事として広まりましたが、今では全ての社会階層に愛される定番料理です。テイクアウトして新聞紙に包まれた熱々のフィッシュ・アンド・チップスは、特に海辺の町での思い出として多くのイギリス人の心に刻まれています。
「カレー」、特に「チキン・ティッカ・マサラ」はイギリスで最も人気のある料理の一つです。実はこの料理はイギリスで生まれたインド風料理で、マイルドなトマトクリームソースが特徴です。1970年代以降、「金曜の夜のカレー」として友人と一緒にカレーを食べに行く文化が定着し、今では国民食と言っても過言ではないほどです。家庭でも調理されますが、テイクアウトやレストランで食べることも非常に一般的です。
「ジャケットポテト」(皮ごと焼いたポテト)も手軽で人気の家庭料理です。外はカリッと、中はホクホクに焼いたじゃがいもに、チーズ、ツナマヨネーズ、ベイクドビーンズ、コールスローなど様々なトッピングをのせて食べます。ランチやカジュアルな夕食として親しまれており、子供から大人まで好きな人が多い料理です。特に寒い冬の日にホクホクのポテトは体を温めてくれます。
⑤ 知っておきたいイギリスの文化(その他)
―イギリスの食事で、日本人が知っておいた方がいい豆知識ってある?
「パブでの注文方法」は知っておくと便利です。イギリスのパブでは基本的にカウンターで注文して支払いをします。テーブルサービスがあるパブもありますが、多くの場合はテーブルを確保した後に順番にカウンターへ行って注文するスタイルです。また、「ラウンド」という習慣があり、グループで飲む場合は一人が全員分のドリンクを買い、次は別の人が全員分を買うというローテーションが一般的です。自分の番が来たらきちんと「ラウンド」を買うのがマナーとされています。
「お茶の入れ方」も文化的に重要です。イギリス人にとってお茶(紅茶)は単なる飲み物以上の意味を持ち、入れ方にもこだわりがあります。一般的には「ミルクファースト vs ティーファースト」という議論があり、カップにミルクを先に入れるか、お茶を先に入れるかで意見が分かれます。伝統的には「ミルクファースト」が正式とされてきましたが、これは昔の陶器が熱いお茶で割れるのを防ぐための方法でした。現在は好みで分かれています。また、ティーバッグでお茶を入れる場合は、必ずティーポットを使い、カップに直接ティーバッグを入れるのは「カジュアル」とされることもあります。
「イギリスのスーパーマーケットの特徴」も知っておくと便利です。イギリスのスーパーではレディミール(ready meal、すぐに食べられる調理済み食品)の種類が非常に豊富で、一人暮らしの人や忙しい家庭にとって重要な存在です。また、「Reduced(リデュースド)」と書かれた黄色や赤のステッカーがついた商品は、消費期限が近づいているため値引きされている商品です。夕方になると特に増えるので、賢く買い物したい人は狙い目です。さらに、多くのスーパーでは「ミール・ディール」というランチセットのようなお得なパックが販売されており、サンドイッチ+スナック+ドリンクのセットがリーズナブルな価格で提供されています。
「ベジタリアン・ヴィーガン対応」の充実ぶりも特筆すべきです。イギリスはベジタリアン・ヴィーガン人口が多いため、レストランでは必ずベジタリアンメニューが用意されていますし、スーパーでもベジタリアン・ヴィーガン用の食品が豊富に揃っています。特に「クオーン」(Quorn)という菌類由来の肉代替品が一般的で、ベジタリアン向けのソーセージやミンチ、ナゲットなどが人気です。レストランでもベジタリアン向けの「シェパーズパイ」や「ソーセージ&マッシュ」などが提供されることが多いです。
「地域による食文化の違い」も面白いポイントです。イギリスは小さな国ですが、地域によって食文化が大きく異なります。例えば、スコットランドでは「ハギス」や「ディープフライドマーズバー」(チョコレートバーを衣で揚げたもの)、コーンウォールでは「コーニッシュパスティ」(肉と野菜を包んだパイ)、ウェールズでは「ウェルシュラレビット」(チーズソースをかけたトースト)など、各地方に独自の料理があります。イギリスを訪れる際は、その地域ならではの料理を試してみるのも楽しいでしょう。
―イギリス人が好きな日本食って何? そのイメージは?
寿司はダントツの人気です!特に「サーモン」や「アボカド」を使った巻き寿司が好まれています。イギリスでは寿司は「健康的でスタイリッシュな食べ物」というイメージがあり、ランチタイムには多くのオフィスワーカーが寿司チェーン店を利用しています。ただし、日本の寿司とは少し異なり、アボカドやクリームチーズなどの具材を多用したり、スイートチリソースやマヨネーズをかけたりするなど、西洋化されている面もあります。また、多くのイギリス人は寿司を「箸ではなく手で食べる」ことを知らないので、レストランでも箸で食べる人が多いです。
ラーメンも近年非常に人気が高まっています。特に若い世代を中心に「ラーメンカルチャー」が広がっており、ロンドンをはじめとする大都市では本格的なラーメン店に行列ができることも珍しくありません。日本のラーメンのイメージは「コクがあり、栄養満点で、エキゾチックな食べ物」というもので、特に「トンコツ」と「ミソ」が人気フレーバーです。また、ラーメンは「インスタント食品」というイメージもまだ根強く、大学生などの間では「カップヌードル」も定番の食べ物となっています。
天ぷらも高く評価されています。イギリス人は「フィッシュ&チップス」のような揚げ物文化があるせいか、天ぷらのサクサクした食感を特に評価する傾向があります。ただし、イギリスの日本食レストランでの天ぷらは、日本の天ぷらより衣が厚めで、西洋人の好みに合わせた味付けになっていることも多いです。また、ベジタリアンが多いイギリスでは野菜の天ぷらも特に人気があります。
抹茶フレーバーのデザートやドリンクも大ブームです。「抹茶ラテ」や「抹茶アイスクリーム」、「抹茶ケーキ」などが特に人気で、カフェやデザート店で定番メニューになっています。イギリス人にとっての抹茶は「エキゾチックで健康的な味」というイメージがあり、その鮮やかな緑色も視覚的な魅力となっています。ただし、本格的な抹茶の苦味よりも、甘くマイルドにアレンジされていることが多いです。
カレーライスも親しまれていますが、イギリス人の「カレー」のイメージはどちらかというとインド・パキスタン風のカレーの方が強いです。それでも「カツカレー」や「ジャパニーズカレー」として提供される日本風カレーは、「マイルドで家庭的な味わい」として徐々に人気を獲得しています。特にカレーパンのような「食べ歩きできるカレー料理」は、忙しいランチタイムにぴったりとして評価されています。
まとめ
イギリスの食文化を知ることで、「イギリス料理はまずい」という古いステレオタイプを超えた、多様で豊かな食の世界が見えてきます。伝統的なローストディナーやパブでの食事文化、パイやプディングといった伝統菓子、そして多文化社会を反映したインド料理やその他の国際料理まで、イギリスの食文化は歴史と革新が融合した興味深いものです。
食事の時間帯や作法、会話のルール、祝日の特別料理など、日本との違いを理解しておくことで、イギリスでの食体験がより豊かなものになるでしょう。特に食事中の会話の流れ方や、チップの習慣、パブでの注文方法など、実践的な知識は実際に訪れた際に役立つはずです。
また、イギリスの「お袋の味」や家庭料理を知ることで、その国の人々の日常生活や価値観にも触れることができます。シェパーズパイやバンガーズ・アンド・マッシュのような素朴な料理には、イギリス人の実用的でありながらも心温まる食文化が反映されています。
イギリスへの留学や長期滞在、旅行の際には、有名な観光スポットを訪れるだけでなく、地元のパブやマーケット、食文化イベントなどに足を運んでみてください。そこで出会う食を通じて、より深くイギリスという国とその人々を理解することができるでしょう。
ワンコイングリッシュでは、英語だけでなく文化などについても教えてくれます。他の先生や生徒とコミュニケーションが取れるイベントも盛りだくさんで、海外の文化を知ろうとしている方におすすめの英会話学校です。体験レッスンも受付中ですので、是非活用をご検討ください。