現地人が教えるアルゼンチンで人気のステーキハウス5選

アルゼンチンといえば、世界最高品質の牛肉を誇る「肉食大国」として世界中の美食家たちに知られています。広大なパンパ(大草原)で育てられたアルゼンチン牛は、その柔らかさと深い旨味で「世界一美味しい牛肉」とも称されています。特に「アサード」(炭火焼き)の文化は、単なる調理法を超えてアルゼンチン人のライフスタイルそのものであり、家族や友人との絆を深める神聖な時間として大切にされています。
そこで今回は、ブエノスアイレス在住8年のカルロスさん(仮名、アルゼンチン人)に、観光ガイドには載っていない、現地人だからこそ知るアルゼンチンの牛肉文化と本当に美味しいステーキハウスを5つ教えてもらいました。アルゼンチン牛肉の歴史から正しい食べ方まで、アルゼンチンのステーキ体験を完全ガイドします。
アルゼンチンの牛肉文化の基本と背景
――アルゼンチンの牛肉文化って、アルゼンチン人からするとどんな意味を持ってるの?簡単に説明してもらえる?
アルゼンチンの牛肉文化は、僕たちの「国民的アイデンティティ」そのものなんだ。19世紀後期にヨーロッパから移住してきた人々が、広大なパンパの草原で牧畜業を発展させて、それが現在の世界最高級の牛肉産業の基礎を築いたんだよ。
「アサード」は単なる料理じゃなくて、アルゼンチン人にとって「儀式」のような神聖な意味を持っているんだ。週末になると、家族や友人が集まって、「アサドール」(グリル担当者)が時間をかけて肉を焼く。この時間は談笑し、絆を深める大切なひとときなんだ。
アルゼンチンの牛肉が世界一美味しいとされる理由は、まず牧草だね。パンパの自然の牧草だけで育った「パストゥーレ」(牧草飼育)の牛は、穀物肥育の牛とは全然違う味わいなんだ。ストレスのない環境で育つから、肉質がとても柔らかくて、自然な甘みがあるんだよ。
僕たちアルゼンチン人は年間約50キロの牛肉を消費していて、これは世界最高水準なんだ。朝食以外のすべての食事に牛肉が登場することも珍しくない。「Carne」(カルネ、肉)と言えば自動的に牛肉を指すほど、生活に根付いているんだ。
――アルゼンチン牛肉の特徴や、他の国の牛肉との違いは?
アルゼンチン牛肉の最大の特徴は、その「自然さ」なんだ。牛たちは一年中屋外の牧草地で過ごして、抗生物質やホルモン剤を一切使用しない。これが肉質の良さと安全性を保証しているんだよ。
部位の切り方も独特で、アルゼンチンには他の国では見られない特別なカットがあるんだ:
主要な部位:
- Bife de Chorizo(ビフェ・デ・チョリソ):サーロインに近い部位、最も人気
- Ojo de Bife(オホ・デ・ビフェ):リブアイステーキ
- Bife de Costilla(ビフェ・デ・コスティージャ):Tボーンステーキ
- Vacío(バシオ):フランクステーキ、アルゼンチン特有の部位
- Entraña(エントラーニャ):スカートステーキ
アメリカやオーストラリアの牛肉と比べて、アルゼンチン牛肉は脂肪が少なくて赤身が多いのが特徴なんだ。でも、パサパサしているわけじゃなくて、肉本来の旨味が凝縮されていて、噛むほどに味が出てくるんだよ。
調理法も重要で、アルゼンチンでは必ず「パリージャ」(炭火グリル)で焼くんだ。ガスではなく、木炭や薪を使って、低温でじっくりと焼き上げる。この方法により、外はカリッと、中はジューシーな完璧な仕上がりになるんだ。
現地人おすすめ!人気のステーキハウス5選
1. Don Julio(ドン・フリオ)- ブエノスアイレス・パレルモ
――まず最初におすすめのステーキハウスを教えて
Don Julioは、世界的に有名なアルゼンチンステーキハウスの代表格で、2019年にはWorld’s 50 Best RestaurantsでLatin America’s Best Restaurantに選ばれたんだ。1999年にオープンして以来、アルゼンチン牛肉の素晴らしさを世界に広めている名店なんだよ。
Don Julioの特徴は、最高品質の牛肉を極めてシンプルに調理することなんだ。彼らは自分たちの牧場を持っていて、「From Farm to Table」を実践している。牧草だけで育てた牛を、最適な熟成期間を経てから提供しているんだ。
特に有名なのは「Bife de Chorizo」で、これはDon Julioの代名詞とも言える一品なんだ。400gの厚切りサーロインを、パリージャで完璧に焼き上げたもので、外側はカリッと香ばしく、内側は美しいピンク色に仕上がっているんだ。
Don Julioの素晴らしいところは、肉の品質だけじゃなくて、サービスのレベルも世界一流ということなんだ。ソムリエが厳選したアルゼンチンワインとのペアリングも絶品で、特にマルベックとの組み合わせは天国のような美味しさだよ。
予約は必須で、特に夜は2ヶ月先まで埋まっていることもあるから、早めの予約をおすすめするね。
場所: ブエノスアイレス・パレルモ地区 Guatemala 4699
営業時間: 月-日 12:00-16:00、19:30-24:00
おすすめメニュー: Bife de Chorizo(7,500ペソ)、Ojo de Bife、マルベックワイン
2. La Cabrera(ラ・カブレラ)- ブエノスアイレス・パレルモ
――2番目のお店は?もう少しカジュアルで地元の人も通うような店は?
La Cabreraは、アルゼンチン人にも観光客にも愛される、もう少しカジュアルなパリージャなんだ。2000年にオープンして以来、「本物のアルゼンチン体験」を提供し続けている人気店だよ。
La Cabreraの最大の魅力は、その「ボリューム」と「コストパフォーマンス」なんだ。ここのステーキは一人前が500g以上あって、しかもサイドディッシュが無料でついてくるんだ。グリルされた野菜、ポテト、サラダなど、テーブルに所狭しと並べられる光景は圧巻だよ。
ここの名物は「Parrillada para Dos」(2人用グリル盛り合わせ)で、様々な部位のステーキが一つのプラッターに盛られて提供されるんだ。Bife de Chorizo、Vacío、Entraña、そしてチョリソ(ソーセージ)やモルシージャ(血のソーセージ)まで含まれていて、まさにアルゼンチン牛肉の博物館のような体験ができるんだ。
La Cabreraの雰囲気も素晴らしくて、典型的なアルゼンチンのパリージャの内装で、壁にはサッカーの写真やタンゴの絵が飾られているんだ。地元の家族連れやカップルで常に賑わっていて、本当のブエノスアイレスの夜を体験できる場所なんだよ。
場所: ブエノスアイレス・パレルモ地区 José Antonio Cabrera 5099
営業時間: 月-日 12:30-16:00、20:00-2:00
おすすめメニュー: Parrillada para Dos(8,000ペソ)、Bife de Chorizo、Flan Casero
3. El Preferido de Palermo(エル・プレフェリード・デ・パレルモ)- ブエノスアイレス
――3番目のお店はどこ?もっと伝統的で歴史のある店は?
El Preferido de Palermoは、1952年創業の老舗で、ブエノスアイレスで最も歴史あるパリージャの一つなんだ。70年以上にわたってアルゼンチン人に愛され続けている、まさに「伝統の味」を守り続けている名店だよ。
ここの特徴は、昔ながらの製法を一切変えずに、創業当時のレシピと調理法を忠実に守っていることなんだ。パリージャも1952年から使っている同じものを使用していて、長年の使用で蓄積された「味」が肉に独特の風味を与えているんだ。
El Preferido de Palermoの名物は「Bife de Costilla」で、これはアルゼンチンの伝統的なTボーンステーキなんだ。骨付きの肉を低温でじっくりと焼き上げることで、骨からの旨味が肉全体に浸透して、他では味わえない深いコクが楽しめるんだよ。
ここで特別なのは、「Chimichurri」(チミチュリ)ソースなんだ。パセリ、ニンニク、オレガノ、唐辛子をオリーブオイルと酢で和えたこのソースは、70年間変わらないレシピで作られていて、ステーキとの相性が抜群なんだ。
店内の雰囲気も昔のままで、古いポスターや写真が壁に飾られていて、まるでタイムスリップしたような感覚になるね。地元の常連客も多くて、本当のアルゼンチンの「街の肉屋」の雰囲気を楽しめるんだ。
場所: ブエノスアイレス・パレルモ地区 Borges 2108
営業時間: 火-日 12:00-15:30、20:00-24:00(月曜定休)
おすすめメニュー: Bife de Costilla(6,200ペソ)、Chimichurri、Provoleta
4. Fervor(フェルボル)- ブエノスアイレス・レコレータ
――4番目のお店は?
Fervorは、ブエノスアイレスの高級地区レコレータにある、最もエレガントなステーキハウスなんだ。1999年にオープンして以来、政治家、ビジネスマン、セレブリティが通う「大人のための」高級パリージャとして知られているよ。
Fervorの特徴は、伝統的なアルゼンチン牛肉に現代的な調理技術を組み合わせた「モダン・アルゼンチン料理」なんだ。シェフのエルマン・ジラルディは、フランス料理の技術を学んでから故郷に戻ってきて、アルゼンチン牛肉の新しい可能性を追求しているんだ。
ここの看板メニューは「Ojo de Bife con Reducción de Malbec」(マルベック・リダクション・ソース付きリブアイ)で、最高級のリブアイステーキに、アルゼンチンの誇るマルベックワインを煮詰めたソースを合わせた一品なんだ。肉とワインの完璧なマリアージュが楽しめるよ。
Fervorの素晴らしいところは、牛肉の部位ごとに最適な調理法を追求していることなんだ。Vacíoは低温調理で、Entraañaは高温で短時間、というように、それぞれの部位の特性を最大限に活かしているんだ。
店内は洗練されたモダンな内装で、ビジネスディナーやロマンチックなデートにも最適な雰囲気なんだ。ワインセラーも充実していて、アルゼンチンの最高級ワインを豊富に取り揃えているよ。
場所: ブエノスアイレス・レコレータ地区 Posadas 1519
営業時間: 月-土 12:00-15:30、20:00-1:00(日曜定休)
おすすめメニュー: Ojo de Bife con Malbec(8,800ペソ)、Vacío、高級マルベック
5. Cabaña Las Lilas(カバーニャ・ラス・リラス)- ブエノスアイレス・プエルト・マデロ
――最後の5番目のお店は?
Cabaña Las Lilasは、プエルト・マデロの水辺にある、アルゼンチンで最も有名で高級なステーキハウスなんだ。1998年にオープンして以来、世界中のVIPが訪れる「アルゼンチン牛肉の殿堂」として君臨しているよ。
Cabaña Las Lilasの最大の特徴は、自社牧場で育てた最高級の牛肉のみを使用していることなんだ。パンパの最良の土地にある牧場で、完全に自然な環境で育てられた牛を、厳格な品質管理のもとで加工している。まさに「Farm to Table」の最高峰なんだ。
ここの名物は「Bife de Chorizo Premium」で、これは通常のBife de Chorizoより厚く切られた特別な一品なんだ。600gの厚切りステーキは、外側は完璧にカリッと焼かれ、内側は美しいピンク色に仕上がっている。一口食べると、アルゼンチン牛肉の真髄を感じることができるよ。
Cabaña Las Lilasで特別なのは、その「熟成」技術なんだ。最適な温度と湿度で28日間熟成させた牛肉は、旨味が凝縮されて、まるでバターのような柔らかさになるんだ。これは他のレストランでは味わえない特別な体験だね。
レストランからはリオ・デ・ラ・プラタ川とブエノスアイレスのスカイラインが一望できて、ロマンチックな雰囲気も抜群なんだ。特に夕日の時間は絶景で、世界最高の牛肉と最高の景色を同時に楽しめるよ。
場所: ブエノスアイレス・プエルト・マデロ Alicia Moreau de Justo 516
営業時間: 月-日 12:00-16:00、20:00-1:00
おすすめメニュー: Bife de Chorizo Premium(12,000ペソ)、熟成ステーキ、プレミアム・マルベック
アルゼンチンステーキの正しい楽しみ方とマナー
――アルゼンチンでステーキを食べる時のマナーや食べ方で、観光客が知っておくべきことは?
アルゼンチンでステーキを食べる時には、いくつかの重要なマナーがあるんだ。でも、基本的にはリラックスして楽しむことが一番大切なんだよ。
基本的な食べ方:
- 焼き加減の指定: 「Vuelta y vuelta」(表裏1回ずつ、レア)、「Jugoso」(ミディアムレア)、「A punto」(ミディアム)、「Bien cocido」(ウェルダン)
- ナイフとフォークの使い方: 左手にフォーク、右手にナイフで、アメリカ式ではなくヨーロッパ式
- チミチュリの使用: テーブルに置かれているチミチュリソースを適量かける
- ワインとの組み合わせ: 必ずアルゼンチンのマルベックワインと一緒に楽しむ
アルゼンチン人は食事の時間をとても大切にするから、急いで食べるのはマナー違反なんだ。ゆっくりと会話を楽しみながら、時間をかけて味わうのが正しいスタイルだよ。
――ステーキの部位や、注文時のコツは?
アルゼンチンでステーキを注文する時は、部位の特徴を理解して選ぶことが重要なんだ:
主要部位の特徴:
- Bife de Chorizo: 最も人気、適度な脂肪でバランス良い
- Ojo de Bife: 非常に柔らかい、脂肪多め
- Vacío: アルゼンチン特有、赤身で味濃い
- Entraña: 噛み応えがあり、濃厚な味
- Bife de Costilla: 骨付き、ボリューム満点
注文のコツ:
- 「Para dos personas」(2人前)で注文すると量的にちょうど良い
- 「Con guarnición」(付け合わせと一緒に)でポテトやサラダを追加
- 「Una botella de Malbec」(マルベックワイン1本)も忘れずに
初めての人には「Bife de Chorizo」を「Jugoso」(ミディアムレア)で注文することをおすすめするよ。これがアルゼンチンステーキの基本中の基本なんだ。
ステーキ体験をより深めるためのアドバイス
――観光客がアルゼンチンでステーキを楽しむ時に、より本格的な体験をするためのコツは?
本格的なアルゼンチンステーキ体験をしたいなら、まずはアルゼンチン人の家庭での「アサード」(バーベキューパーティー)に参加することをおすすめするよ。これは単なる食事じゃなくて、アルゼンチン文化の真髄を体験できる機会なんだ。
牧場見学ツアーに参加するのも面白いね。ブエノスアイレス近郊には多くの牧場があって、実際に牛たちが育っている環境を見ることで、アルゼンチン牛肉の品質の理由を理解できるよ。
ワインテイスティングも忘れずに。メンドーサやサルタなどのワイン産地を訪れて、マルベックの生産者から直接話を聞くと、ステーキとワインのペアリングがより深く楽しめるようになるんだ。
肉屋「Carnicería」を訪れるのもおすすめだね。地元の肉屋で様々な部位を見て、説明を聞くことで、アルゼンチンの肉文化をより深く理解できるよ。
――初心者におすすめの楽しみ方や注意点は?
初心者の方には、まずは有名なレストランから始めることをおすすめするよ。Don JulioやLa Cabreraなら、確実に美味しいステーキを体験できるし、サービスも観光客に慣れているから安心だね。
最初は「Bife de Chorizo」の「Jugoso」(ミディアムレア)を注文して、アルゼンチンステーキの基準を理解するといいよ。その後で他の部位にチャレンジしてみてね。
注意点としては、量がとても多いことなんだ。一人前が400g以上あることが普通だから、少食の人は2人でシェアしても十分だよ。残すのはもったいないからね。
マルベックワインとのペアリングは必須だけど、アルコールが苦手な人には「Agua con gas」(炭酸水)やフレッシュジュースも美味しいよ。
時間に余裕を持って行くことも大切だね。アルゼンチンのレストランはサービスがゆっくりだから、急いでいる時には向かないんだ。でも、その分リラックスした時間を楽しめるよ。
まとめ
アルゼンチンの牛肉文化は、広大なパンパの自然環境と何世代にもわたる牧畜業の知恵、そしてヨーロッパ移民がもたらした調理技術が融合して生まれた、世界でも類を見ない食文化の傑作です。アサードの文化は単なる食事を超えて、家族や友人との絆を深める神聖な時間として、アルゼンチン人の生活に深く根ざしています。
今回紹介した5つのステーキハウスは、それぞれ異なるスタイルと哲学を持つ名店ばかり。世界的に有名な高級店から地元愛される老舗まで、アルゼンチン牛肉文化の幅広さと深さを体験できる場所です。
重要なのは、ステーキを通じてアルゼンチンの文化と人々の情熱に触れ、その豊かさを感じることです。正しい食べ方を覚えてマルベックワインと一緒に楽しめば、きっとアルゼンチンという国への愛着も深まるはずです。
今回紹介したステーキハウスのまとめ:
- Don Julio – 世界が認める最高級アルゼンチンステーキの殿堂
- La Cabrera – ボリューム満点のカジュアル人気店
- El Preferido de Palermo – 70年の伝統を守る老舗の味
- Fervor – モダン技術と伝統の融合した高級店
- Cabaña Las Lilas – 自社牧場の最高級熟成肉
アルゼンチンのステーキ体験は、きっと忘れられない美味しい思い出となるでしょう。¡Buen provecho!(ブエン・プロベーチョ、召し上がれ!)